ラスク(読み)らすく(英語表記)Emil Lask

デジタル大辞泉 「ラスク」の意味・読み・例文・類語

ラスク(Rasmus Christian Rask)

[1787~1832]デンマークの言語学者。「グリムの法則」とよばれたゲルマン語の子音推移の現象を初めて指摘し、ヤーコプ=グリムとともに比較言語学の方法論を確立した。著「古代ノルド語の起源に関する研究」など。

ラスク(rusk)

食パンなどを薄く切り、卵白と砂糖をまぜたものを塗って、天火で焼いた菓子。

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精選版 日本国語大辞典 「ラスク」の意味・読み・例文・類語

ラスク

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] rusk ) 薄く切ったパンに砂糖と泡だてた卵白などを混ぜて塗り、天火で焼いた菓子。〔モダン辞典(1930)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラスク」の意味・わかりやすい解説

ラスク(Emil Lask)
らすく
Emil Lask
(1875―1915)

ドイツの哲学者。リッケルトウィンデルバントに師事し、西南ドイツ学派に属する。1905年『法哲学』によって教授資格取得、1913年ハイデルベルク大学員外教授。

 カントのコペルニクス的転回の意義を、単に存在領域のみならず、広義の対象領域である妥当領域にまで及ぼすことにより、「存在」の範疇(はんちゅう)を論ずる「哲学」に対し、範疇の範疇である「妥当」を論ずる『哲学の論理学』(1911)を構想した。ラスクはプラトン以来の二世界説を、存在領域と妥当領域を二つの独立の領域として引き離す誤った二重化として退け、対象そのもののなかに論理的形式と非論理的質料を認める二要素説を提起することによって、カント哲学の客観主義的解釈を徹底化した。また真理と虚偽を対象と意味との合致としてではなく、対象=意味のなかに実現されている形式と質料の合一状態が主観によって打ち破られて生ずる調和・不調和としてとらえ直すことによって、独自の『判断論』(1911)を展開した。

 彼は新カント学派の俊英として嘱望されていたが、第一次世界大戦に従軍し、惜しくも1915年ガリツィアで戦死した。

[野家啓一 2015年4月17日]


ラスク(Rasmus Christian Rask)
らすく
Rasmus Christian Rask
(1787―1832)

デンマークの言語学者。比較言語学の創始者の一人。コペンハーゲン大学図書館副館長(1808)、のち同大教授(1825)を務めた。デンマークの学士院の懸賞論文として1814年に提出した『古代ノルド語の起源に関する研究』Undersøgelse om det gamle nordiske eller islandske sprogs oprindelse(1818刊行)で、のちに「グリムの法則」とよばれたゲルマン語の音韻推移の現象を初めて明らかにした。その後、南ロシア、ペルシア、インドを旅行し、言語調査を行うとともに、東洋諸語の多くの稿本を収集した。ゾロアスターの聖典の言語アベスタおよび古代ペルシア語サンスクリット語との親縁性を確証し、またケルト語の印欧語的性格を明らかにした。ほかに、アイスランド語アングロ・サクソン語フリジア語などの文法書を書いた。

[松本克己 2018年8月21日]


ラスク(David Dean Rusk)
らすく
David Dean Rusk
(1909―1994)

アメリカの政治家、国務長官ジョージア州チェロキー生まれ。オックスフォード大学などで学ぶ。1934年からカリフォルニア州ミルズ・カレッジで教鞭(きょうべん)をとったのち、第二次世界大戦時には陸軍に加わり、中国・ビルマ(現ミャンマー)・インド戦線副参謀長として活躍。戦後まもなく国務省に入り、国連担当国務次官補、国務次官代理などを経て、1950年に極東担当国務次官補に就任。1951年の対日講和条約の作成に参画。1952~1960年ロックフェラー財団理事長。1961年から1969年1月までケネディジョンソン両政権の国務長官を務め、政府のベトナム戦争政策を推進、擁護した。1970年よりジョージア大学国際法教授。

[藤本 博]

『ディビッド・ハルバースタム著、浅野輔訳『ベスト&ブライテスト』全三冊(1976・サイマル出版会)』


ラスク(菓子)
らすく
rusk

焼き菓子のビスケットの一種。パンを主材料にしてつくる。食パンやフランスパンなどを薄切りにして揚げたり焼いたりしたもの。一般的なものは、卵白に粉砂糖をよく混ぜたものを塗り、オーブンで焼く。語源はスペイン語またはポルトガル語のroscaで、「ねじれ」という意味がある。保存性のある菓子。家庭ではバターやジャムなどで変化をつけることもある。

[河野友美・山口米子]

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改訂新版 世界大百科事典 「ラスク」の意味・わかりやすい解説

ラスク
Rasmus Kristian Rask
生没年:1787-1832

デンマークの言語学者。コペンハーゲン大学東洋語教授(1831-32)。少年時代から約50ヵ国語を修めて諸国語の文法書を編纂。《古代北欧語あるいはアイスランド語の起源に関する研究》(1814執筆,18刊行)の中で,いわゆるゲルマン語音韻推移によって,他のインド・ヨーロッパ語とゲルマン諸語との親縁関係を証明し,19世紀の科学的な歴史・比較言語研究の先駆者となる。一般に〈グリムの法則〉として知られる理論は,グリム以前にラスクによって発見されていたが,ラスクの著作はデンマーク語によったため,北欧以外に十分広まらなかった。
執筆者:


ラスク
Emil Lask
生没年:1875-1915

ドイツの哲学者。新カント学派の一つである西南ドイツ学派に属する。彼は,論理的形式と感性的内容の相互独立性を否定し,両者を認識対象の非独立的な要素とみることによって,対象の中に論理的形式の存在を認め,これこそが対象をして対象たらしめるものであるとする。認識主観ではなくて論理が対象を構成するとみるこうした論理的客観主義の立場をカント哲学の真意とみた。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「ラスク」の意味・わかりやすい解説

ラスク

米国の政治家。第2次大戦中は陸軍の情報・参謀将校。1946年国務省に入り,1950年極東担当国務次官補となり,朝鮮戦争収拾,サンフランシスコ講和条約日米行政協定の成立に重要な役割を果たした。ケネディジョンソンの下で国務長官(1961年―1968年)として米ソ接近策を推進。

ラスク

ドイツの新カント学派の哲学者。ウィンデルバント,リッケルトに学び,西南ドイツ学派の主観主義的な先験的論理主義の立場を継承した。他方またボルツァーノの影響を受け,現象学の客観主義的立場に近づいた。著書《法哲学》(1905年)など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラスク」の意味・わかりやすい解説

ラスク
Rask, Rasmus(Kristian)

[生]1787.11.22. ブレネキレ
[没]1832.11.14. コペンハーゲン
デンマークの言語学者。 1818年に出版の『古期ノルド語またはアイスランド語の起源の研究』 Undersögelse om det gamle Nordiske eller Islandske Sprogs Oprindelseで,ゲルマン語派の諸言語と,ギリシア語,ラテン語,バルト語派,スラブ語派の諸言語との間の音韻対応の規則性を示し,これらが互いに近い関係にあることを示唆した。これにより F.ボップと並んで比較言語学の祖と称される。そのほかフィン=ウゴル語派の研究があり,またペルシア語やパーリ語などの文献を収集し,以後の比較言語学の発達に貢献した。

ラスク
Lask, Emil

[生]1875.9.25. ワドウィツェ
[没]1915.5.26. ガリチア
ドイツの哲学者。西南ドイツ学派 (バーデン学派) の新カント主義を代表。ドイツの哲学者 W.ウィンデルバントに師事し,1910年ハイデルベルク大学教授。カントにおいて認識主観より産出されるとする範疇概念を批判し,対象の原型としての範疇を考え (範疇の範疇という) ,それによって徹頭徹尾客観的な論理学を樹立しようとした。主著"Die Logik der Philosophie und die Kategorienlehre" (1910) ,"Die Lehre vom Urteil" (11) 。

ラスク
Rusk, (David) Dean

[生]1909.2.9. ジョージア,チェロキー
[没]1994.12.20. ジョージア,アセンズ
アメリカの官僚,政治家。オックスフォード大学に学んだ。 1934~40年ミルズ大学で政治学講師。 46年国務省に入り,47年国連部長,50~51年極東アジア担当国務次官補。 52~61年ロックフェラー財団理事長となったが,61年1月手堅さを買われて J.ケネディ政権の国務長官に選ばれ,L.ジョンソン政権になってからも 69年まで留任,インドシナ半島へのアメリカの軍事介入に積極的立場をとった。 70年ジョージア大学ロースクール国際法教授。

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「ラスク」の解説

ラスク【rusk】

洋菓子の一種。薄く切った一口サイズのパンの表面に、卵白と砂糖を混ぜ合わせたものを塗ってオーブンで焼いたもの。

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367日誕生日大事典 「ラスク」の解説

ラスク

生年月日:1875年9月25日
ドイツの哲学者
1915年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

栄養・生化学辞典 「ラスク」の解説

ラスク

 薄く切ったパンの表面に卵白と砂糖を混ぜて塗り,オーブンで焼いた菓子.

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世界大百科事典(旧版)内のラスクの言及

【シトレンジ】より

…その後,ウイルス病,センチュウなどの耐病虫性台木として注目された。日本には1918年に可食性の品種ラスクが,52年台木用の品種トロイヤーが導入された。とげはカラタチに比べ小さい。…

【エスキモー・アレウト語族】より

エスキモー語アレウト語からなる。両者の類似はすでに18世紀後半に気づかれているが,初めて同系の証明を企てたのは,印欧比較言語学史に有名なラスクRasmus K.Rask(1787‐1832)である。原エスキモー・アレウト語から二岐的に分かれたというよりむしろ,古くはさらに別の同系の言語があったと推定され,原エスキモー語も原アレウト語もベーリング海峡近辺におそらく存在した古い方言連続体の小断片にすぎぬものかもしれない。…

【エスキモー・アレウト語族】より

エスキモー語アレウト語からなる。両者の類似はすでに18世紀後半に気づかれているが,初めて同系の証明を企てたのは,印欧比較言語学史に有名なラスクRasmus K.Rask(1787‐1832)である。原エスキモー・アレウト語から二岐的に分かれたというよりむしろ,古くはさらに別の同系の言語があったと推定され,原エスキモー語も原アレウト語もベーリング海峡近辺におそらく存在した古い方言連続体の小断片にすぎぬものかもしれない。…

【グリムの法則】より

…J.グリム(グリム兄弟の兄)と同時代のデンマークの言語学者R.K.ラスクによってすでに確認されていたインド・ヨーロッパ諸語(インド・ヨーロッパ語族)とゲルマン語(ゲルマン語派)の間の子音の規則的対応を,グリムが定式法則化したもの。グリム自身はこの規則的対応を音韻推移(ゲルマン語音韻推移)と名づけたが,グリムの名にちなんでグリムの法則とも呼ばれる。…

※「ラスク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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