日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラスク」の意味・わかりやすい解説
ラスク(Emil Lask)
らすく
Emil Lask
(1875―1915)
ドイツの哲学者。リッケルト、ウィンデルバントに師事し、西南ドイツ学派に属する。1905年『法哲学』によって教授資格取得、1913年ハイデルベルク大学員外教授。
カントのコペルニクス的転回の意義を、単に存在領域のみならず、広義の対象領域である妥当領域にまで及ぼすことにより、「存在」の範疇(はんちゅう)を論ずる「哲学」に対し、範疇の範疇である「妥当」を論ずる『哲学の論理学』(1911)を構想した。ラスクはプラトン以来の二世界説を、存在領域と妥当領域を二つの独立の領域として引き離す誤った二重化として退け、対象そのもののなかに論理的形式と非論理的質料を認める二要素説を提起することによって、カント哲学の客観主義的解釈を徹底化した。また真理と虚偽を対象と意味との合致としてではなく、対象=意味のなかに実現されている形式と質料の合一状態が主観によって打ち破られて生ずる調和・不調和としてとらえ直すことによって、独自の『判断論』(1911)を展開した。
彼は新カント学派の俊英として嘱望されていたが、第一次世界大戦に従軍し、惜しくも1915年ガリツィアで戦死した。
[野家啓一 2015年4月17日]
ラスク(Rasmus Christian Rask)
らすく
Rasmus Christian Rask
(1787―1832)
デンマークの言語学者。比較言語学の創始者の一人。コペンハーゲン大学図書館副館長(1808)、のち同大教授(1825)を務めた。デンマークの学士院の懸賞論文として1814年に提出した『古代ノルド語の起源に関する研究』Undersøgelse om det gamle nordiske eller islandske sprogs oprindelse(1818刊行)で、のちに「グリムの法則」とよばれたゲルマン語の音韻推移の現象を初めて明らかにした。その後、南ロシア、ペルシア、インドを旅行し、言語調査を行うとともに、東洋諸語の多くの稿本を収集した。ゾロアスターの聖典の言語アベスタおよび古代ペルシア語とサンスクリット語との親縁性を確証し、またケルト語の印欧語的性格を明らかにした。ほかに、アイスランド語、アングロ・サクソン語、フリジア語などの文法書を書いた。
[松本克己 2018年8月21日]
ラスク(David Dean Rusk)
らすく
David Dean Rusk
(1909―1994)
アメリカの政治家、国務長官。ジョージア州チェロキー生まれ。オックスフォード大学などで学ぶ。1934年からカリフォルニア州ミルズ・カレッジで教鞭(きょうべん)をとったのち、第二次世界大戦時には陸軍に加わり、中国・ビルマ(現ミャンマー)・インド戦線副参謀長として活躍。戦後まもなく国務省に入り、国連担当国務次官補、国務次官代理などを経て、1950年に極東担当国務次官補に就任。1951年の対日講和条約の作成に参画。1952~1960年ロックフェラー財団理事長。1961年から1969年1月までケネディ、ジョンソン両政権の国務長官を務め、政府のベトナム戦争政策を推進、擁護した。1970年よりジョージア大学国際法教授。
[藤本 博]
『ディビッド・ハルバースタム著、浅野輔訳『ベスト&ブライテスト』全三冊(1976・サイマル出版会)』
ラスク(菓子)
らすく
rusk
焼き菓子のビスケットの一種。パンを主材料にしてつくる。食パンやフランスパンなどを薄切りにして揚げたり焼いたりしたもの。一般的なものは、卵白に粉砂糖をよく混ぜたものを塗り、オーブンで焼く。語源はスペイン語またはポルトガル語のroscaで、「ねじれ」という意味がある。保存性のある菓子。家庭ではバターやジャムなどで変化をつけることもある。
[河野友美・山口米子]