改訂新版 世界大百科事典 「ベテルチューイング」の意味・わかりやすい解説
ベテル・チューイング
betel chewing
ヤシ科のアレカヤシ,通称ビンロウジュAreca catechuの種子(ベテル・ナット)の核と石灰を,コショウ科のつる性植物キンマPiper betleの葉で包み,これを口の中で嚙む習慣をベテル・チューイングと呼ぶ。嚙んでいると口中が朱赤色になり,これを唾液とともに吐く。チョウジ,カルダモンなどの香料を加えることもある。ベテル・ナットはアルカロイドを含み,興奮性の麻酔作用があり,紀元前よりインド,東南アジア,オセアニアの各地で咬嚙料masticatoryとして広く栽培・利用されてきた。インド,マレーシアではアレカヤシの種核を石灰と煮たり,乾燥・塩蔵したものが商品として売られる。ベテル・ナットは日常の嗜好品としてだけでなく,来客の接待,結婚式の交換財,祖霊崇拝儀礼の供物,悪霊払い,厄よけといった社会的・宗教的目的にも使われる。ベテル・ナットを砕いたり,石灰を入れるのに種々の器具が使われる。
執筆者:秋道 智彌
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報