内科学 第10版 「ペルオキシゾーム病」の解説
ペルオキシゾーム病(脂質代謝異常症、糖蛋白代謝異常症、ムコ多糖症)
ペルオキシゾームは細胞小器官の1つで,20~26の炭素鎖をもつ極長鎖脂肪酸(VLCFA)のβ酸化を行う.コレステロールや胆汁の合成,アミノ酸やプリン代謝にも寄与する.ペルオキシゾームの生合成過程の異常症(Zellweger症候群など)と,ペルオキシゾームの酵素の機能異常症(副腎白質ジストロフィなど)の2種類に分類される.
副腎白質ジストロフィ
ペルオキシゾーム膜輸送蛋白ALDP(副腎白質ジストロフィ蛋白)の欠損で,ABCD1遺伝子の変異によるX染色体連鎖劣性遺伝病である.大脳白質の広範な脱髄と副腎機能不全を特徴とする.40%を占める脳型は,4~8歳頃に皮膚の色素沈着,易疲労などの副腎機能不全と注意欠陥障害で発症し,重度の行動異常,知能低下,皮質聾,皮質盲,四肢痙性麻痺をきたす.また,約45%は副腎脊髄神経障害(adrenomyeloneuropathy:AMN)とよばれる軽症型で,20~30歳代から進行性の痙性対麻痺,排尿障害,性機能障害と末梢神経障害を生じる.脱髄は後頭葉から前頭葉に進行する(図15-10-2).血清や赤血球の脂肪酸分析でVLCFAの単独増加により診断する.造血幹細胞移植が小児大脳型軽症例の進行抑制には有効である.エルカ酸とオレイン酸の混合物(Lorenzo’s oil)は血清中のVLCFAを正常化するが,神経症状には無効である.[宮嶋裕明]
■文献
Peroxisomes & Lysosomal enzymes. In: The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 7th ed(Scriver CR, Beaudet AL, et al eds), pp2287-2882, McGraw-Hill, New York, 1995.
Genetic diseases of the CNS. In: Merritt’s Neurology, 12th ed (Rowland LP, Pedley TA, eds), pp614-632 & 646-650, Lippincott Williams & Wilkins, New York, 2009.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報