日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペレス・デ・イータ」の意味・わかりやすい解説
ペレス・デ・イータ
ぺれすでいーた
Ginés Pérez de Hita
(1544?―1619?)
スペインの歴史小説家。ムルシア県ムーラ生まれ。該博な知識と教養は作品からうかがえるが、どのような教育を受けたかは不明。『グラナダ戦記』(前・後編)はスペイン文学史上、初の本格的歴史小説。とくに前編が優れ、国土回復戦争でキリスト教徒側に奪回される直前のグラナダが美しく描かれている。民衆詩ロマンセが作品中に散りばめられ、気品のある文体を引き立てている。後編はモリスコ(キリスト教に改宗してスペインに残った元イスラム教徒)の反逆と敗北を描く。本書は19世紀に英・独・仏語に翻訳され、ヨーロッパ近代文学に影響を与えた。
[清水憲男]