ホルモンの分泌調節

内科学 第10版 「ホルモンの分泌調節」の解説

ホルモンの分泌調節(ホルモンの生合成、分泌、代謝)

(3)ホルモンの分泌調節
a.フィードバック調節
 内分泌系の調節で最も特徴的なのがフィードバック調節である.内分泌腺から分泌されたホルモンは標的臓器に作用するが,そのホルモン効果は標的臓器から内分泌腺にフィードバックされ,内分泌腺からのホルモン分泌を抑制(ネガティブフィードバック)したり,促進(ポジティブフィードバック)したりする.たとえば,視床下部からCRH副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌され,CRHが下垂体からのACTH分泌を刺激して,ACTHが副腎皮質からのコルチゾール分泌を刺激する.一方で,分泌されたコルチゾールは視床下部,下垂体からのCRH,ACTH分泌をネガティブフィードバック機構により抑制する.そのほかにも,血中カルシウム濃度が副甲状腺のCa感知受容体を介してPTH(副甲状腺ホルモン)分泌を抑制する例がある(図12-1-1).これらのフィードバック機構は内分泌検査に広く用いられている.たとえば,甲状腺機能低下症では,甲状腺ホルモンの低下に対する生体の適切な反応としてのTSH(甲状腺刺激ホルモン)上昇が診断に用いられる.デキサメタゾン抑制試験によるCRH-ACTH系を抑制したときのコルチゾール高値は,正常のネガティブフィードバック機構の消失からCushing症候群の診断に用いられる.
b.バイオリズム
 多くのホルモン分泌は季節変化,明暗周期による日内変動,睡眠,食事,ストレスなどにより変動して環境変化に適応する.ホルモン分泌のリズム周期はさまざまで,1~2時間ごとに分泌されるLHなどの下垂体ホルモンのパルス状分泌,コルチゾールでは早朝高値,夕方から夜間にかけての低値を認める日内リズム,平均28日間周期を示す月経周期に応じたゴナドトロピン分泌などが知られている.視床下部から分泌されるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の間欠的な分泌は,下垂体から1~2時間ごとのLHのパルス状分泌を維持しており,GnRHの持続投与はLH分泌を抑制する.中枢性思春期早発症や前立腺癌の治療では,その性質を利用して,持続的なGnRH投与により,LH分泌および性ホルモンの低下を誘導する治療が行われている. このように,バイオリズムにより血中ホルモンレベルは変動するために,内分泌疾患の診断では,ホルモンの総分泌量が重要であり,コルチゾール分泌量として24時間尿中コルチゾール,GH(成長ホルモン)分泌量としてIGF-Ⅰ,インスリンとして尿中Cペプチドなどが用いられる.[柴田洋孝・伊藤 裕]
■文献
Melmed S, Polonsky KS, et al: Hormones and hormone action. In: Williams Textbook of Endocrinology, 12th ed, pp3-99, Elsevier Saunders, Philadelphia, 2011. Jameson JL, DeGroot LJ: Principles of endocrinology and hormone signaling. In: Endocrinology, 6th ed, pp3-14, Elsevier, Amsterdam, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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