改訂新版 世界大百科事典 「ボトリチス」の意味・わかりやすい解説
ボトリチス
Botrytis
不完全菌亜門,不完全糸状菌綱に含まれる1属の菌類。腐生的に生活するが,灰色かび病菌として多くの植物に寄生する。分生子柄は上方で疎に分枝し,先端から数個の分生子を出芽的に形成する。不完全菌類ではあるが有性世代(完全世代)も知られており,有性世代のものは子囊菌類,盤菌綱,キンカクキン科のBotryotinia属とされている。世界的に分布する病原菌で,イチゴ,トマト,ナス,ミカンなどに大きな被害を与える。有性世代としては菌核病菌となる。代表種はイチゴの灰色かび病菌Botrytis cinerea Persoon ex Fries。植物の病害菌である反面,ブドウ酒醸造に際し,条件によってはブドウにはえて糖含量を高め,いわゆる貴腐(きふ)ワインをつくる重要菌ともなる。
執筆者:椿 啓介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報