改訂新版 世界大百科事典 「ポントス山脈」の意味・わかりやすい解説
ポントス[山脈]
Pontus Mountains
トルコ共和国北部,黒海に沿って西から東へ走る褶曲山脈の総称。トルコではこの呼称は用いられず,それぞれ別個の呼称で呼ぶ。西側では沿岸部のイスフェンディヤルİsfendiyar山脈と内陸部のキョロールKöröğlu山脈の二つに分かれているが,中央部ではジャニクCanik山脈となり,さらにその東側では東黒海山脈Doğu Karadeniz Dağlarıとなってカフカス山脈に連なる。全長1000km以上,幅はおよそ100~130km。平均標高は2500~2800mであるが,東に進むほど高く,最高峰はエルズルム北部のカチュカル山(3937m)。横断する主要な河川は東からサカリヤ川,クズルウルマク川,イェシルウルマク川であり,各河川とも重要な交通路で黒海への河口に小規模なデルタを形成する。この山脈と黒海に挟まれた沿岸部はトルコで最も降雨量が多く(平均年1500mm以上),夏季は涼しく,冬季も比較的温暖である。主要な作物は茶,ヘーゼルナッツおよびトウモロコシで,いずれもトルコ最大の生産量を誇る。
執筆者:長場 紘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報