化学辞典 第2版 「マクロライド抗生物質」の解説
マクロライド抗生物質
マクロライドコウセイブッシツ
macrolide antibiotics
大環状ラクトン抗生物質(macrocyelic lactone antibiotics)ともいう.放線菌の生産する抗生物質のなかに,多くのCH3側鎖をもつ十二,十四または十六員環ラクトンにジメチルアミノ糖や中性糖が結合したエリスロマイシン,ロイコマイシン,スピラマイシンなど,狭義のマクロライド抗生物質が約30種類知られている.そのほかに,4~7個の共役二重結合を含むポリエン多員環ラクトンで,抗かび性をもつものもあり,これらを総称する.前者は脂溶性で,ジメチルアミノ糖を含むものは培養濾液からアルカリ性の pH で酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出され,ついで酸性の水溶液に転溶して精製される.生合成的には,ラクトン部分は酢酸,プロピオン酸酪酸に由来し,糖部分はグルコースに由来することが明らかにされている.これらマクロライド抗生物質の抗菌作用機能は,細菌のタンパク質合成阻害であり,その70 Sリボソームに作用点をもち,50 Sサブユニットに強く結合してアミノアシル転移RNAときっ抗する.一般的に静菌作用を示すが,高濃度では殺菌的にはたらき,グラム陰性球菌,百日咳菌,梅毒トレポネーマ,マイコプラズマなどに強い抗菌力を示す.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報