日本大百科全書(ニッポニカ) 「酢酸エチル」の意味・わかりやすい解説
酢酸エチル
さくさんえちる
ethyl acetate
代表的なエステルで、天然にはパイナップルなどの果実中に存在し、その香気の成分となっている。ワインや日本酒にも微量含まれている。酢酸とエタノール(エチルアルコール)とを少量の硫酸の存在下で加熱すると生成する。この反応で硫酸は触媒と脱水剤を兼ねている。
常温では芳香を有する無色で揮発性の液体。エタノール、エーテル、ベンゼンなどほとんどすべての有機溶媒と任意の割合で混じり合う。水にもかなり溶ける。水があると徐々に加水分解をおこして酢酸とエタノールになる。この反応は、酸やアルカリが共存すると促進される。種々の有機物を溶かす能力が大きいので、塗料など広範囲にわたって溶剤として使われる。また、香料として、果汁、果実エッセンス、菓子などに用いられる。
[廣田 穰]