代表的なエステルで、天然にはパイナップルなどの果実中に存在し、その香気の成分となっている。ワインや日本酒にも微量含まれている。酢酸とエタノール(エチルアルコール)とを少量の硫酸の存在下で加熱すると生成する。この反応で硫酸は触媒と脱水剤を兼ねている。
常温では芳香を有する無色で揮発性の液体。エタノール、エーテル、ベンゼンなどほとんどすべての有機溶媒と任意の割合で混じり合う。水にもかなり溶ける。水があると徐々に加水分解をおこして酢酸とエタノールになる。この反応は、酸やアルカリが共存すると促進される。種々の有機物を溶かす能力が大きいので、塗料など広範囲にわたって溶剤として使われる。また、香料として、果汁、果実エッセンス、菓子などに用いられる。
[廣田 穰]
酢酸エチル
CH3COOC2H5
分子式 C4H8O2
分子量 88.1
融点 -83.6℃
沸点 76.82℃
比重 0.9005
屈折率 (n) 1.3723
C4H8O2(88.11).CH3COOC2H5.エタノールと酢酸とを硫酸の存在下で加熱するか,エタノールを無水酢酸または塩化アセチルと反応させると得られる.特有の果実の芳香をもつ無色の液体.融点-83.6 ℃,沸点76.8 ℃.0.902.1.3723.引火点-3 ℃.水に微溶,エタノール,アセトン,クロロホルムやエーテルに可溶.溶剤や果実香料のほかに,繊維やプラスチックなどの化成品の製造原料に用いられる.[CAS 141-78-6]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…水による分解反応を広く加水分解といい,酢酸ナトリウムのような塩(えん)の加水分解,酢酸エチルのようなエステルの加水分解,デンプンやタンパク質の加水分解など,化学反応には加水分解の例が多い。強酸と強塩基との中和によりできた塩,たとえば食塩は,水に溶かすとナトリウムイオンと塩素イオンに電離するだけであるが,酢酸ナトリウムや炭酸ナトリウムのように弱酸と強塩基からできた塩,塩化アンモニウムや硫酸アルミニウムのような強酸と弱塩基からできた塩,さらに酢酸アンモニウムのように弱酸と弱塩基からできた塩は,それを水に溶かすと加水分解が起こる。…
…無水酢酸にアルコールを作用させても合成できる。
[酢酸エチルethyl acetate]
酢酸とエチルアルコールから得られるエステル。化学式CH3COOC2H5。…
※「酢酸エチル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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