改訂新版 世界大百科事典 「マックスハーフェラール」の意味・わかりやすい解説
マックス・ハーフェラール
Max Havelaar
オランダの小説家ダウエス・デッケルが,植民地官吏として西ジャワで勤務した体験をもとに,ムルタトゥーリという筆名で1860年に発表した小説。この小説は,19世紀半ばのオランダ植民地官吏と原住民首長の過酷な収奪の実態を暴露したものとして,オランダ本国に深刻な衝撃を与え,当時の植民地政策である強制栽培制度を廃止に導く一つの契機になったといわれる。また,この小説に描かれた〈サイジャとアディンダの悲恋物語〉は,過酷な支配に抵抗して死んでいく若者の生涯を写して,後のインドネシア民族主義者に強い影響を及ぼした。一方,作者ムルタトゥーリは19世紀の写実主義文学の代表者としても注目され,今日彼とこの作品についての研究が盛んで,1976年にはオランダでこの小説が映画化されて大きな反響を呼んだ。邦訳(《蘭印に正義を叫ぶマックス・ハーフェラール》1942)もある。
執筆者:土屋 健治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報