改訂新版 世界大百科事典 「マユーラ」の意味・わかりやすい解説
マユーラ
Mayūra
7世紀のサンスクリット抒情詩人。生没年不詳。戒日王ハルシャ(在位606-648)の宮廷詩人として有名なバーナBāṇaの義父(あるいは義兄)といわれる。恋愛抒情詩《マユーラ・シャタカMayūra-śataka》と宗教的抒情詩《スーリヤ・シャタカSūrya-śataka》を残した。伝説によれば,代表作《スーリヤ・シャタカ》成立の由来は,彼が《マユーラ・シャタカ》の中で,自分の娘(あるいは妹)が愛人のもとに行き,戻るまでの情景をあまりに露骨に描写したため,怒った娘の呪詛によって癩病となったが,太陽神スーリヤを賛美したこの詩を書いて業病から快癒したという。この詩は技巧的な100頌の詩句から成り,スーリヤ神の威力を賛美した宗教的抒情詩で,太陽神の治病の力に対する信仰が吐露されている。
執筆者:田中 於莵弥
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報