日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミナミクロダイ」の意味・わかりやすい解説
ミナミクロダイ
みなみくろだい / 南黒鯛
southern seabream
[学] Acanthopagrus sivicolus
硬骨魚綱スズキ目タイ科ヘダイ亜科に属する海水魚。奄美(あまみ)諸島、琉球(りゅうきゅう)諸島の海域だけに分布する固有種で、量的にも多い。台湾沿岸にはいないが、宮崎県で少数採捕されたこともある。両顎(りょうがく)側部に3列以上の強い臼歯(きゅうし)がある。全長約50センチメートル。背びれ棘(きょく)部中央下の上方横列鱗(りん)数が5枚であること、腹びれと臀(しり)びれが暗灰色であることで、キチヌやクロダイと区別される。内湾の砂泥底、沿岸の岩礁域、河口の汽水域に多く生息し、甲殻類、貝類、多毛類、海藻類などを食べる。5~6月に卵径約0.9ミリメートルの分離浮性卵を産む。孵化仔魚(ふかしぎょ)は全長2.3ミリメートルほどで、幼魚は砂浜海岸の砕波帯などに多く出現する。沖縄県水産試験場では有用食用魚の一つに指定し、種苗生産の大量化に取り組んでいる。おもに釣りで漁獲され、市場価値は高い。肉は白身で、刺身、塩焼きなどにするとおいしい。オキナワキチヌA. chinshiraに似るが、ミナミクロダイは腹びれと臀びれが暗褐色で側線鱗数は46~52枚であること、臀びれ第2棘が短く、その長さは頭長の2.0~2.1倍であることなどで区別できる。
[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年9月19日]