改訂新版 世界大百科事典 「ミャゼーディ碑文」の意味・わかりやすい解説
ミャゼーディ碑文 (ミャゼーディひぶん)
現存する最古のビルマ語碑文。ミャンマー(旧ビルマ)中部,パガン遺跡の南,ミンカバー村のミャゼーディ・パゴダMyazedi Pagodaのかたわらで発見されたためその名があるが,同パゴダはクービャウチー寺院(1113年建)の境内にある。石碑は二つあり,同文で,一つはパガン博物館に,もう一つはパゴダの境内にある。ともに2m足らずの4面体の石柱で,各面にパーリ語,モン語,ビルマ語と1911年オットー・ブラグデンによって解読されるまでは不明であったピュー語の4言語で記されている。碑文はパガン朝第3代の国王チャンシッターの子ラージャクマールによって1112年に記されたもので,死に瀕した父のために寺院を建立して黄金仏を祭り,奴隷を寺院に寄進したことが書かれている。その内容からチャンシッター王の正確な即位年や在位期間が判明,ビルマ史の年代確定のうえで貴重な資料となったほか,ピュー語解読の〈ロゼッタ・ストーン〉の役割も果たした。
執筆者:大野 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報