日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムシモドキギンチャク」の意味・わかりやすい解説
ムシモドキギンチャク
むしもどきぎんちゃく / 擬虫巾着
[学] Edwardsioides japonica
刺胞(しほう)動物門花虫(はなむし)綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目ムシモドキギンチャク科に属する海産動物。隔膜糸内縁に三叉(さんさ)状の繊毛帯をもち、第2環列以後の隔膜が外腔にのみ発達してくるイマイソギンチャク類のうち、虫体下端が砂泥地に埋まって生活するように適応した丸い底球となり、槍糸(やりいと)を欠き、触手をもち、周口筋を欠き、8枚の完全隔膜をもつことを特徴とするムシモドキギンチャク科の1種である。
体が細長く、頭部、幹部、底球の3部に分けられ、幹部にはその中膠(ちゅうこう)内に埋まった凹部に大形の刺胞を蓄えた刺胞弾を散在させるEdwardsia属の仲間で、口盤近くにある小隔膜に不対隔膜をもつことを特長とするEdwardsioides属に属する。この種は相模(さがみ)湾および女川(おながわ)湾の浅海の砂泥底に産し、体長24ミリメートル、径4ミリメートルで、幹部は黄褐色の分泌物に覆われる。触手は短くて16~20本。刺胞弾は幹部全面に散在するが、小さく肉眼では見えない。幹部の全長にわたり、よく発達した筋旗(きんき)をもつ8枚の完全隔膜が走り、虫体最上部の口盤付近にのみ発達の悪い第2環列の隔膜を備える。完全隔膜のうち背腹の4枚は2対の方向隔膜となるが、側方の4枚は対(つい)をなさない。ムシモドキギンチャク科は、足盤をもたず砂泥底の生活に適応したいくつかの科のなかではかなり古くに分化して、原始的な形質を多く残した科であると考えられる。
[内田紘臣]