日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムンダ諸言語」の意味・わかりやすい解説
ムンダ諸言語
むんだしょげんご
オーストロアジア語族の西部語群に属し、インドの主として中部から東部にかけて散在する非アーリア系人種によって話される言語だが、ベンガル湾上に浮かぶアンダマンやニコバル諸島の使用者も含めると、約600万の使用人口をもつ。ムンダ諸言語の使用者たちは、ドラビダ人種やアーリア人種がくる以前からインド亜大陸の広い範囲にわたって住んでおり、集団で村をつくり、農耕を営んで生活していたのだが、他の人種が移住してくるにつれ、しだいに森や山間部に追いやられてしまったものと思われる。
なお、ムンダ諸言語は1500年前、サンスクリット語とプラークリット語でコッラ語とよばれていたため、ムンダのかわりにコール諸言語と命名することを主張した学者もいる。
また、ムンダ諸言語は、次のごとく四つの下位グループに分けることが可能である。
〔1〕東部グループ――サンタール語・ムンダーリー語・ホー語・ブミジ語・ビルホール語・コダ語・トゥリ語・アスリー語・コルワ語
〔2〕西部グループ――クルク語
〔3〕中部グループ――カリア語・ジュアン語
〔4〕南部グループ――ソーラ語・パレン語・グトブ語・レモ語・ガタッ語
これらのなかでは、サンタール語の使用者がもっとも多く、ムンダーリー語、ホー語の使用者と続いているが、いずれも豊かですばらしい口誦(こうしょう)文学をもっている。しかしサンタール語とムンダーリー語以外のムンダ諸言語にはいずれも特有の文字がないため、表記の際はローマ字かベンガル文字、ナーガリー文字、オリア文字などが代用される。
[奈良 毅]
『J. HoffmannMundari Grammar (1903, Calcutta)』▽『Encyclopaedia Mundarica, 14 parts (1914~19, Bihar Government Printing, Patna)』