化学辞典 第2版 「メタホウ酸」の解説
メタホウ酸(塩)
メタホウサンエン
metaboric acid(metaborate)
酸:組成式HBO2(43.82)のポリマー.分子式 (HBO2)n の伝統名.2005年IUPAC命名法による正式名称は配位化合物表記に対してcatena-ポリ(ヒドロキシドホウ素-μ-オキシド).オルトホウ酸を加熱すると,H2Oを失ってメタホウ酸となる.三変態がある.
(1)I型(α相)は,ホウ酸を100~130 ℃ に加熱すると得られる.斜方晶系.融点176 ℃.密度1.784 g cm-3.平面六角形型分子B3O3(OH)3が,互いに水素結合した構造をもつ(図(a)).B-O 1.35~1.39 Å,O-H0.9 Å.H…O 2.7 Å.
(2)130~150 ℃ に加熱すると生じるⅡ型(β相)は,単斜晶系.融点201 ℃.密度2.044 g cm-3.平面三角型のBO3と,正四面体型のBO2(OH)(OH2)を2:1に含むB3O4(OH)(OH2)を基本に水素結合している.
(3)150 ℃ 以上に加熱すると生じるⅢ型(γ相)は,立方晶系.融点236 ℃.密度2.49 g cm-3.正四面体型のBO4が,互いにいくつかのO原子を共有して三次元的に広がった骨組みをもつ.さらに加熱すると脱水してB2O3となる.Ⅰ型は潮解性をもつが,Ⅱ,Ⅲ型にはない.[CAS 13460-50-9]
塩:[BO2-]nn-.2005年IUPAC命名法による正式名称は,表記に対してcatena-ポリ(ヒドロキシドホウ酸塩-μ-オキシド(1-)):
(1)[B3O6]3- 塩.K,Na,Baなどの塩で,平面三角形型のBO3 3個が縮合した平面六角形型の陰イオンをもつ.ホウ酸またはB2O3と,各金属の水酸化物または炭酸塩との反応で得られる.
(2)鎖状ポリマー形の陰イオンをもつ塩 [B3O6]3- の3個のO原子のうち2個を,互いに隣接したイオンと共有して鎖状になっている(図(b)).Ca,Li,Srなどの塩でみられる.たとえばCa塩は,ホウ砂とCaCl2との混合溶融,またはKOH水溶液中で,ホウ酸とCaCl2との反応などで得られる.
(3)従来,メタホウ酸塩とよばれていたものには,Mg[(HO)3B-O-B(OH)3]構造のMg(BO2)2・3H2O(図(c)),正四面体型のBO4のO共有鎖状構造の [AgBO2]n(図(d)),O共有立体構造の [Cu2(BO2)2]n など,さまざまの形のものがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報