鉄や銅などの金属を含む複合タンパクで,酸素と可逆的に結合する色素である。多くは血液中にあって血液色素とも呼ばれ,酸素を運搬あるいは貯蔵する役割を果たしている。ヘモグロビンはほとんどすべての脊椎動物と一部の無脊椎動物に,クロロクルオリンはケヤリなどに,ヘムエリトリンはホシムシやシャミセンガイにみられ,いずれも鉄を含んでいる。銅を含むヘモシアニンは甲殻類や頭足類にみられる。これらの色素は酸素結合能力がきわめて大きく,たとえばヒトの場合,血漿(けつしよう)にとける酸素は0.3%(容量)にすぎないのに実際に動脈血に含まれる酸素は19%に達する。酸素結合特性は同じ種類の色素でも動物の種によって異なっており,その違いは色素の酸素飽和度を縦軸に酸素分圧を横軸にとって表した酸素平衡(解離)曲線によって示される。これらの血液色素と違ってミオグロビンは筋肉組織中にあって酸素の貯蔵や拡散促進に関与している。ヘモグロビンにくらべてミオグロビンは酸素親和性がはるかに大きく,低酸素分圧で飽和する。たとえば哺乳類の静脈血の酸素圧ではヘモグロビンはその60%が酸素と結合するのにたいしてミオグロビンは90%に達する。したがって同じ酸素分圧のもとではミオグロビンはヘモグロビンから容易に酸素を吸収する。このほか,電子伝達系に関与するチトクロム類(還元状態で赤から赤緑色を呈す)やフラビン酵素(酸化状態で黄色)も呼吸色素といえる。
執筆者:佃 弘子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
生体内で呼吸機構に関与する色素タンパク質の総称。狭義には、血液中にあって呼吸器官から組織に酸素を運搬するヘモグロビンなどの血色素をさす。広義にはチトクロム類、フラビン酵素類などの呼吸酵素一般を含むこともある。血色素の本来の機能は分子状酸素の運搬にあり、酸素の代謝的消費(酸化)を行う呼吸酵素とは機能を異にする。血色素はいずれもポルフィリンの金属錯塩とタンパク質の複合体であり、可逆的に酸素と結合する。たとえば、脊椎(せきつい)動物赤血球中のヘモグロビンは鉄を含む赤色のヘムタンパク質であり、酸素分圧の高い肺では
Hb(ヘモグロビン)+O2(酸素)
HbO2(オキシヘモグロビン)
のように酸素を結合し、分圧の低い末梢(まっしょう)組織では酸素を遊離する。いわゆるガス中毒は、ガス中の一酸化炭素がより強固にヘモグロビンと結合し、酸素との結合を阻害するためにおこる。このほか血色素としては、下等動物にみられるヘモシアニン(青色、銅含有)、クロロクルオリン(緑色)、ヘモエリスリン(赤色)などが知られている。いずれも酸素の授受によって色の変化を伴う。
[入江伸吉]
…この点を解決する手段の一つとして発達する機構が循環系で,体液を媒体として栄養物,代謝産物,酸素,二酸化炭素,体熱などを運搬している。酸素は細胞,ひいては1個体が生きていくために不可欠なものであるが,その取入れ方は単に体表面から拡散によって取り入れるものから,呼吸色素を担体とし循環系によってガス交換の場に運ばれるものまで,動物の進化段階に応じてさまざまな方式がとられる。血液は呼吸色素を含む体液で,それを入れる脈管を血管blood vesselという。…
※「呼吸色素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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