改訂新版 世界大百科事典 「メリムデ」の意味・わかりやすい解説
メリムデ
Merimde
エジプト北部,カイロ北西約60kmにある下エジプトを代表する新石器時代の大集落遺跡。中心遺跡は,マリムダ・バニー・サラーマ。1920年代末から約10年間にわたり,オーストリアのH.ユンカーらによって発掘された。ここで発見された文化を総称してメリムデ文化と呼んでいる。遺跡は3時期に大別されるが,発掘が必ずしも適切でなかったこともあり,この文化をどの時期に置くかは異論が多い。出土遺物から考え,おそらく上エジプトのバダーリ文化期の後半から,アムラ文化期(ナカーダⅠ期)の末ころにかけての時期のものとみられる。埋葬様式や石製容器,パレット,棍棒頭などにパレスティナ的様相が強くみられる。上エジプトの先王朝文化と異なり,特別な墓域は存在せず,人々は住居間に掘られた浅い長円形の竪穴墓に屈葬の形で埋葬された。これはパレスティナ地域の初期新石器文化の埋葬例と類似している。鉢形の石製容器は閃緑岩や玄武岩製で,パレットも玄武岩やカコウ岩,アラバスターなどから作られており,形状も上エジプトのものとは大きく異なっている。棍棒頭は,パレスティナやメソポタミア地域で一般的な洋梨形のもので,上エジプト地域では,ゲルゼ文化期(ナカーダⅡ期)にならないと出現しないものである。
執筆者:近藤 二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報