改訂新版 世界大百科事典 「ゲルゼ文化」の意味・わかりやすい解説
ゲルゼ文化 (ゲルゼぶんか)
エジプト先王朝時代末期の金石併用期文化で,ナカーダⅡ文化とも呼ばれる。ナイル下流のゲルゼGerze遺跡にちなんで名づけられた。バダーリ文化,アムラ文化の延長上に位置し,地域はアムラ文化より南北に拡大している。アムラ文化末期に変容を遂げた村落共同体は,前4千年紀の後半にノモスの中心となる町へと成長していった。彩文土器や波状把手付土器,注口土器等に特色がある。石器加工技術は頂点に達し,押圧剝離技法によるみごとなフリント製ナイフが作られた。長方形の竪穴墓が広く普及し,壁龕(へきがん)をもつものや,木棺,陶棺に埋葬された例もある。住居のプランも長方形が一般的となった。シュメールのジェムデット・ナスル型円筒印章の存在や大型の奉納用パレット等に見られる非エジプト的意匠等,メソポタミアからの文化的影響を想起させる。ラピスラズリの流入等,この時期,交易は飛躍的に発展した。統一の過程で,町は城壁をめぐらして要塞と化し,やがて強力な第1王朝が出現する。
執筆者:近藤 二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報