屈葬(読み)くっそう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

屈葬
くっそう

蹲葬ともいう。手足を屈折させて葬る葬法。各種の形式があり,上を向いたもの,横を向いたもの,伏せたもの,すわったものなどがある。日本では縄文時代に盛んに行われた。屈葬を行う原因については諸説があるが,死者を恐れ,特に死霊再来により災いが起ることを防ぐために行う場合が多いようである。このことは死者に石を抱かせて埋葬する方法に端的にうかがえる。

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百科事典マイペディアの解説

屈葬【くっそう】

死者の手足の関節を折り曲げて埋葬すること。世界の埋葬法中最古のものとされ,ヨーロッパでは旧石器時代ムスティエ文化に属する遺跡に例がみられ,近代でも世界各地に見られた。日本では縄文(じょうもん)時代に盛行したが弥生(やよい)時代にすたれた。屈葬を行う理由については,就寝もしくは母胎内の胎児の姿勢をとらせたとする説など種々あるが,死者の霊が迷い出るのを防ぐためとする説が有力。
→関連項目国府遺跡縄文時代伸展葬葬制土葬広田遺跡モヨロ貝塚吉胡貝塚

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世界大百科事典 第2版の解説

くっそう【屈葬】

座葬とも呼ばれ,死体の腕脚を折ってしゃがみこんだ姿勢で埋葬する方法。日本では縄文時代から多く報告されている。世界的にはメラネシアの一部と,アフリカ全土でごく一般的に見られる埋葬姿勢である。屈葬を行う理由は,それぞれの民族・文化によって異なると思われる。その一つは実用的な理由で,伸展葬に比べて小さな墓穴ですむことが挙げられる。あるいは,死者に座位という休息の姿勢をとらせて安らかな死後を期待したのかもしれない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

屈葬
くっそう

遺体の手足を折り曲げて葬る葬法のこと。姿勢でみるとかなりの変化があり、あおむき、うつぶせ、横向きなどのほか、うずくまった形の蹲葬(そんそう)や、あぐらをかいて坐(すわ)った姿の坐葬(ざそう)も、屈葬に含められる。考古学的に屈葬を確認できるのは、遺体を土中に埋めた埋葬の事例に限られるといってよい。しかし、民族誌でみると、木の上や台の上に屈葬位で遺体を安置する例や、幼児の場合に多いが軒や木につり下げる例もある。
 屈葬にする理由には、恐ろしい死霊を封じ込めて生者に災いがないように遺体を強く屈曲させて縛ったり梱包(こんぽう)しなければならないとか、胎児の姿勢をとらせることによって母なる胎内への回帰と再生ができるとするものとか、アフリカの採集狩猟民サン(かつてブッシュマンとよばれた)のように横向きに膝(ひざ)を曲げる寝姿で葬ることによって永遠の安息を得るとするものとか、墓穴を掘る労力の軽減であるとか、さまざまなものがある。現在でも屈葬は世界各地に広くみられる葬法である。ヨーロッパでは後期旧石器時代から出現するが、日本で最古の例は、先土器時代後期の屈葬人骨(約1万7000年前)が大分県岩戸(いわと)遺跡から発見されている。[大塚和義]

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世界大百科事典内の屈葬の言及

【墳墓】より

…日本考古学においては,墓と無関係であっても人が掘った穴を土壙(坑)(どこう)と呼び,そして墓穴以外の設備・構造が遺存していない墓,あるいはその痕跡をとどめていない墓を土壙墓(どこうぼ)と呼んでいる。土葬は,遺体をまっすぐ伸ばした形で葬る伸展葬(しんてんそう)と腕・脚を折り曲げた形の屈葬(くつそう)に大別でき,それぞれの姿勢の向きによって,仰向け(仰臥(ぎようが)),横向き(横臥(おうが)),うつ伏せ(俯臥(ふが))に区別できる。このうち仰臥伸展葬が最も一般的であるが,横臥屈葬も旧石器時代以来,世界各地の先史時代に行われた。…

※「屈葬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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