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遺体の手足を折り曲げて葬る葬法のこと。姿勢でみるとかなりの変化があり、あおむき、うつぶせ、横向きなどのほか、うずくまった形の蹲葬(そんそう)や、あぐらをかいて坐(すわ)った姿の坐葬(ざそう)も、屈葬に含められる。考古学的に屈葬を確認できるのは、遺体を土中に埋めた埋葬の事例に限られるといってよい。しかし、民族誌でみると、木の上や台の上に屈葬位で遺体を安置する例や、幼児の場合に多いが軒や木につり下げる例もある。
屈葬にする理由には、恐ろしい死霊を封じ込めて生者に災いがないように遺体を強く屈曲させて縛ったり梱包(こんぽう)しなければならないとか、胎児の姿勢をとらせることによって母なる胎内への回帰と再生ができるとするものとか、アフリカの採集狩猟民サン(かつてブッシュマンとよばれた)のように横向きに膝(ひざ)を曲げる寝姿で葬ることによって永遠の安息を得るとするものとか、墓穴を掘る労力の軽減であるとか、さまざまなものがある。現在でも屈葬は世界各地に広くみられる葬法である。ヨーロッパでは後期旧石器時代から出現するが、日本で最古の例は、先土器時代後期の屈葬人骨(約1万7000年前)が大分県岩戸(いわと)遺跡から発見されている。
[大塚和義]
座葬とも呼ばれ,死体の腕脚を折ってしゃがみこんだ姿勢で埋葬する方法。日本では縄文時代から多く報告されている。世界的にはメラネシアの一部と,アフリカ全土でごく一般的に見られる埋葬姿勢である。屈葬を行う理由は,それぞれの民族・文化によって異なると思われる。その一つは実用的な理由で,伸展葬に比べて小さな墓穴ですむことが挙げられる。あるいは,死者に座位という休息の姿勢をとらせて安らかな死後を期待したのかもしれない。さらに大地を母と表象するような文化を保持する民族の場合には,屈葬が母胎内の胎児の姿勢を表し,これによって死者の母胎回帰,さらにそこからの再生を表現するともみられる。しかしまた,死者がこの世に戻ってくることを恐れて死体を縛って埋葬する習慣が屈葬として現れたとする見方も否定しえない。
執筆者:内堀 基光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
蹲葬(そんそう)とも。死者の手足の関節を曲げた状態で葬る葬法で,縄文時代に普遍的にみられる。仰向けの状態の仰臥(ぎょうが)屈葬,横向きの状態の横臥(おうが)屈葬,うつ伏せ状態の俯臥(ふが)屈葬などの姿勢があり,軽く手足の関節を曲げたもの,きつく折り曲げたものなどがある。屈葬の理由として,墓穴を掘る労力の節約,死者に休息の姿勢をとらせる,胎児の姿勢をとらせて再生を祈り,母なる大地へかえす,死者の霊に対する恐れ,などの諸説がある。
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…日本考古学においては,墓と無関係であっても人が掘った穴を土壙(坑)(どこう)と呼び,そして墓穴以外の設備・構造が遺存していない墓,あるいはその痕跡をとどめていない墓を土壙墓(どこうぼ)と呼んでいる。土葬は,遺体をまっすぐ伸ばした形で葬る伸展葬(しんてんそう)と腕・脚を折り曲げた形の屈葬(くつそう)に大別でき,それぞれの姿勢の向きによって,仰向け(仰臥(ぎようが)),横向き(横臥(おうが)),うつ伏せ(俯臥(ふが))に区別できる。このうち仰臥伸展葬が最も一般的であるが,横臥屈葬も旧石器時代以来,世界各地の先史時代に行われた。…
※「屈葬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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