改訂新版 世界大百科事典 「バダーリ文化」の意味・わかりやすい解説
バダーリ文化 (バダーリぶんか)
前5千年紀後半に成立した,現在までに判明している上エジプト最古の先王朝時代の文化で,金石併用期に属する。バダーリal-Badāri,デイル・ターサ,ムスタジッダ,ハンマミーヤ等,中部エジプトのナイル川東岸地域に集中して遺跡の分布を見るが,その範囲は上流のナカダからヒエラコンポリス付近にまで及んでいる。エンマ小麦,六条大麦,亜麻を栽培し,羊,ヤギ,牛等を飼育していた。土器は薄手で,焼成は良好であり,櫛目磨研土器とブラック・トップ赤色磨研土器とに代表される。住居は低位の砂漠の耕地寄りの部分に営まれ,その山側に墓域が設けられ,人々は長円形の竪穴式墓穴にむしろや亜麻布でくるまれて埋葬された。動物の姿を装飾した象牙製の櫛やスプーン,粘土や象牙製の女性小像,護符なども製作された。また,アシやトウシンソウ(イグサ)などから作られた編物や,亜麻製の織物などが発見されている。
執筆者:近藤 二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報