アムラ文化(読み)アムラぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「アムラ文化」の意味・わかりやすい解説

アムラ文化 (アムラぶんか)

エジプト先王朝時代の文化(金石併用期)。ナイル川上流のアムラal-Amra,ナカーダ等を中心に,北は中部エジプトのアシュート付近から,南はアスワン付近まで分布する。前4千年紀に,バダーリ文化から発展したもので,ナカーダⅠ文化とも呼ばれ,次のゲルゼ文化へと移行していく。赤色土器に白色顔料文様を描いた白色交線文土器やフリント製の魚尾形および菱形のナイフを特徴とする。動物や鳥の意匠を持つ,スレート製のパレット(化粧板)や象牙製の櫛が製作された。南パレスティナの同時代の文化と密接な関係があると指摘される象牙製および粘土製の人物像も多数発見されている。石製容器の製作も開始され,それと関連してキクラデス諸島産の金剛砂が輸入されるようになった。住居址竪穴墓のプランは,長円形のものが一般的であるが,大型で長方形のプランを持つものが出現するようになり,階級分化が急速に進んだことを示している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアムラ文化の言及

【エジプト】より

…シナイ半島産のクジャク石や紅海産の貝など,既に交易も始まっていることが知られる。
[先王朝時代]
 原始農耕文化はエジプト独自の文化の始まりであり,上エジプトではターサ文化に続いてバダーリ文化アムラ(ナカダ第1)文化ゲルゼ(ナカダ第2)文化と継起し王朝時代へ移行する。しかし下エジプトのメリムデ文化に続くオマリ文化,マアディ文化の内容は,ナイル水位の上昇によるデルタ内部の考古学的調査の困難さのためほとんど不明である。…

※「アムラ文化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android