改訂新版 世界大百科事典 「アムラ文化」の意味・わかりやすい解説
アムラ文化 (アムラぶんか)
エジプト先王朝時代の文化(金石併用期)。ナイル川上流のアムラal-Amra,ナカーダ等を中心に,北は中部エジプトのアシュート付近から,南はアスワン付近まで分布する。前4千年紀に,バダーリ文化から発展したもので,ナカーダⅠ文化とも呼ばれ,次のゲルゼ文化へと移行していく。赤色土器に白色顔料で文様を描いた白色交線文土器やフリント製の魚尾形および菱形のナイフを特徴とする。動物や鳥の意匠を持つ,スレート製のパレット(化粧板)や象牙製の櫛が製作された。南パレスティナの同時代の文化と密接な関係があると指摘される象牙製および粘土製の人物像も多数発見されている。石製容器の製作も開始され,それと関連してキクラデス諸島産の金剛砂が輸入されるようになった。住居址や竪穴墓のプランは,長円形のものが一般的であるが,大型で長方形のプランを持つものが出現するようになり,階級の分化が急速に進んだことを示している。
執筆者:近藤 二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報