内科学 第10版 の解説
モチリン - グレリンファミリー(消化管ホルモン)
a.モチリン,グレリン
モチリン(motilin)は十二指腸・上部小腸の腸クロム親和性細胞(enterochromaffin cell:EC細胞),グレリン(ghrelin)はおもに胃のX/A-like細胞で産生・分泌される.モチリン受容体は,ヒトでは胃や十二指腸の神経叢や平滑筋,グレリン受容体は,さまざまな臓器に存在し,多彩な生理作用を有する.モチリンは,空腹期に90~100分間隔で生じる空腹期消化管運動(interdigestive migrating motor complex:MMC)の出現と同期し,強収縮反応(フェーズⅢ)を引き起こす.マクロライド系抗生物質のエリスロマイシンとその誘導体はモチリン受容体アゴニストとして作用し,糖尿病性胃麻痺の改善や,2型糖尿病患者の耐糖能改善効果が報告されている.グレリンは3番目のセリンがghrelin O-acyltransferase(GOAT)によってオクタン酸と結合した活性型のアシルグレリンと不活性型のデスアシルグレリンが存在する.アシルグレリンは,胃酸分泌や空腹期消化管の強収縮運動を促進するほか,摂食促進,エネルギー消費抑制,体重増加,インスリン分泌抑制,心拍出量増加,抗炎症作用などがあり,表8-1-6に示す疾患への臨床応用が期待される.[蔡 明倫・乾 明夫]
■文献
Chen CY, Asakawa A, et al: Ghrelin gene products and the regulation of food intake and gut motility. Pharmacol Rev, 61: 430-481, 2009.
Kamiji MM, Inui A: Neuropeptide y receptor selective ligands in the treatment of obesity. Endocr Rev, 28: 664-684, 2007.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報