セリン(読み)せりん(英語表記)serine

翻訳|serine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セリン」の意味・わかりやすい解説

セリン
せりん
serine

α(アルファ)-アミノ酸の一つ。略号はSerまたはS。クラマーE. Cramerが1865年に絹のタンパク質セリシンから単離し、命名した。構造は1902年にフィッシャーとロイクスH. Leuchsが合成して決定した。高等動物にとっては非必須(ひひっす)アミノ酸である。L-セリンはタンパク質を構成するアミノ酸の一つで、多くのタンパク質中に存在する。セリシンにはとくに多い。乳に含まれるタンパク質のカゼイン中にはリン酸エステルの形で存在する。生体内では直接または間接にグリシンと相互に転換しうる。メチオニンとともにシステイン合成に関与している。D-セリンはカイコの血液中などに存在する。セリンとN-アセチル-D-ガラクトサミンの間のO-グリコシド結合は糖鎖(グルコースガラクトースなどの糖が鎖状に連なった物質)がタンパク質に結合する様式の一つである。セリンのヒドロキシ基のリン酸化はタンパク質のリン酸化の様式の一つである。セリンの化学式はHOCH2CH(NH2)COOHで、分子量105.09。水に溶け、アルコールエーテルには溶けない。

[降旗千恵]

『勝部幸輝他編『タンパク質2 構造と機能編』(1988・東京化学同人)』『鶴大典・船津勝編『蛋白質分解酵素1』(1993・学会出版センター)』『Carl Branden, John Tooze著、勝部幸輝他監訳『タンパク質の構造入門』第2版(2000・ニュートンプレス)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セリン」の意味・わかりやすい解説

セリン
serine

化学式 HOCH2CH(NH2)COOH ,略号 Ser。α-アミノ酸の一種。L体は多くの蛋白質中に広く分布しており,特に絹糸蛋白質のセリシン,フィブロイン中に最も多く含まれている。カゼイン中にはリン酸エステルの形で存在する。アルコール,エーテルに不溶,水に可溶。グリシンとともに代謝系の媒体的役割を果す。

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