日本大百科全書(ニッポニカ) 「モファット・トンネル」の意味・わかりやすい解説
モファット・トンネル
もふぁっととんねる
Moffat Tunnel
アメリカ合衆国、コロラド州にある鉄道トンネル。長さ9996メートル。デンバー・アンド・リオ・グランデ・ウェスタン鉄道(D&RGW)が、デンバーの北西約80キロメートル、ロッキー山脈のジェームズ・ピークの直下を走る地点にある。1860年代の大陸横断鉄道の建設にあたって、地形的な理由でルートから外れてしまったデンバー市民が、自市を通過する大陸横断鉄道を夢みてデンバー・ノースウェスタン・アンド・パシフィック鉄道(DN&P、のちデンバー・アンド・ソルト・レーク鉄道に改組、さらにD&RGWに合併)を設立し、最急勾配(きゅうこうばい)40‰(パーミル)、最高地点3560メートルという峠越えの鉄道を1904年に開業したが、自然災害が多く、営業成績も低迷していた。デンバー市は鉄道会社支援のため、市債を発行してトンネル建設会社をつくり、これを鉄道会社に賃貸することにして、1923年に着工した。1928年2月に開通したが、難工事だったため工費は増額され、市民の一部から市債増額に疑義が出て訴訟が起こされるなど、開通までに多くの話題をよんだ。
建設にあたっての先進導坑は、その後水道トンネルとして利用された。開通時はアメリカ大陸最長のトンネルであったが、翌1929年、新カスケード・トンネルの完成によって首位を譲った。トンネル名は、DN&Pの初代社長でこのトンネルを最初に構想したモファットDavid H. Moffat Jr.(1839―1911)の名にちなんでいる。
[青木栄一・青木 亮]