日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンパンシエ夫人」の意味・わかりやすい解説
モンパンシエ夫人
もんぱんしえふじん
duchesse de Monpensier, Anne Marie Louise d'Orléans
(1627―1693)
フランス国王ルイ13世の弟ガストン・ドルレアンのひとり娘。ルイ14世の従姉。通称「大姫さま」La Grande Mademoiselle。若くしてすでに莫大(ばくだい)な財産を保証され、王家における序列によって王国で最重要人物の一人だった。美しい暗褐色の大きな目の持ち主で、10歳のころからりっぱな結婚をするだろうといわれた。しかし彼女自身は「けっして王としか結婚しない」と決心し、未来のルイ14世が生まれたときには、この6歳下の従弟を「わたしのかわいい旦那(だんな)さま」とよんで、将来結婚することに決めていた。スペイン王、ドイツ皇帝、イギリス王などとの縁談をことごとく無視し、1670年にローザン公爵と秘密結婚したことはあったが、結局、終生「大姫さま」として、ベルサイユ宮に君臨することになった。また、時の宰相マザランに反発し、「フロンドの乱」では反マザラン派の女傑としてバスチーユ要塞(ようさい)の砲門を開かせ、コンデ公軍のパリ入城を助けた。84年に隠退してから、『回想録』Mémoiresを執筆した。
[榊原晃三]