ユダ書(読み)ゆだしょ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユダ書」の意味・わかりやすい解説

ユダ書
ゆだしょ

新約聖書』のなかの書簡の一つ。ユダの手紙ともいう。宛先(あてさき)が教会全般であるという意味で、「ヤコブ書」「ペテロ書」「ヨハネ書」とともに古くから公同の手紙とよばれている。反道徳的傾向をもつグノーシス主義的異端を激しく論駁(ろんばく)し、信徒に対して使徒たちの伝統的信仰を守ることを勧めている。著者は「ヤコブの兄弟であるユダ」(一節)と名のっている。『新約聖書』によると、ヤコブとユダはともにイエスの兄弟でもあるが(「マルコ伝福音書(ふくいんしょ)」6章3)、本書は、内容と背景からみて、紀元100年前後に教会のユダヤ人指導者が、文書に権威をもたせるためにイエスの兄弟の名前を用いて書いたものと思われる。執筆場所はギリシアエジプト、小アジア、シリアなどと推測されているが、いずれも不確かである。

[川島貞雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

南海トラフ臨時情報

東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...

南海トラフ臨時情報の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android