一節(読み)ひとふし

精選版 日本国語大辞典 「一節」の意味・読み・例文・類語

ひと‐ふし【一節】

〘名〙
① 竹・草木・関節などの一つの節(ふし)
拾遺(1005‐07頃か)賀・二七六「ひとふしに千世をこめたる杖なればつくともつきじ君がよはひは〈大中臣頼基〉」
② 一つの特徴ある点。興味をひかれる点。また、気にかかる点。一つのこと。
※枕(10C終)四〇「ひとふしあはれともをかしとも聞きおきつるものは、草・木・とり・むしもおろかにこそおぼえね」
③ 前にあった特別な出来事。先の一件。
源氏(1001‐14頃)若菜下「かのひとふしの別れより、〈略〉心乱り給許」
④ (形動) ただ一つの事を思いつめること。また、そのさま。ひとすじ。
※後撰(951‐953頃)雑二・一一八五「ひとふしに怨なはてそ笛竹のこゑの内にも思ふ心あり〈よみ人しらず〉」
音楽舞踊・語りことばなどの一調子。一曲。ひとおれ。また、その一部分
※源氏(1001‐14頃)竹河「竹かはのはしうちいでし一ふしにふかき心のそこはしりきや」
※良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉後「旦那様のお言葉を、一節(ヒトフシ)なりと聞いたならば」
⑥ 魚の身をたてに四分したものの一つ。鰹(かつお)についていうことが多い。〔日葡辞書(1603‐04)〕
滑稽本浮世風呂(1809‐13)四「ぷりぷりする鰹が一節(ヒトフシ)九文さ」

いっ‐せつ【一節】

〘名〙
① 一区切りの意。文章詩歌、音楽などの一区切り。また、四肢などのひとふし。
※帝室論(1882)〈福沢諭吉〉「一節の歌を以て幾千万人心を繋ぎ」 〔列子‐楊朱
② 禅宗寺院における四つの行事で一年を分けた一区切り。結夏(けつげ)・解夏(げげ)・冬至・年朝の四節の一つ。日本の場合は結夏(四月一五日)と冬至(多く一一月)を中心に一年を二分することが多い。
蔭凉軒日録‐延徳三年(1491)三月一五日「近年諸五山依入院再住有之。纔一節住耳」
③ 商品取引や戦前の株式取引で、午前、午後にそれぞれ売買取引が始まるときの、最初の立会い。〔取引所用語字彙(1917)〕
プロ野球サッカーなどのリーグ戦で、日程の一区切り。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「一節」の意味・読み・例文・類語

いっ‐せつ【一節】

文章・音楽などのひとくぎり。「詩の一節
プロ野球などの日程のひとくぎり。
[類語]部分箇所かしょところ部位一部一部分局部局所細部断片一端いったん一斑いっぱんくだりパートセクション

ひと‐ふし【一節】

竹・木・草などの一つの節。
音楽などのひと区切り。1曲。また、一節いっせつ。「さわりを一節聞かせる」
一つの特有の点。ひとかど。
「―あはれともをかしとも聞きおきつるものは」〈・四〇〉
一つのけじめとなった事柄。さきの折。
「君の御身には、かの―の別れより」〈・若菜下〉

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