日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラフォレー」の意味・わかりやすい解説
ラフォレー
らふぉれー
Carmen Laforet
(1921―2004)
スペインの女性小説家。カナリア諸島で育ち、バルセロナ大学文学部、のちには法学部でも学ぶが、いずれも中退。23歳で発表した処女小説『無(ナダ)』(1944)により、第1回ナダル文学賞を獲得、内戦直後の沈滞したスペイン文学界に新風を吹き込んだ。これはスペイン第二の都市バルセロナの内戦後の混乱した世相をバックに、新生活への期待に胸を膨(ふく)らませて、地方から大学入学のため上ってくる娘アンドレアの大人への目覚めの物語である。作者の自伝的要素も含め、簡潔な文体で戦後の一般読者の身近な世界を鮮明なイメージで描き出すことに成功し人気を得た。1950年代から60年代にかけて『島と悪魔たち』(1952)、『新しい女』(1956)、『めくるめく夏』(1963)、短編集『女の子及び他の物語集』(1970)などの作品を発表した。しかしその後は、創作活動よりは新聞、雑誌への寄稿が目だち、死去の20年ほど前からは公的な活動から遠ざかっていた。
[東谷穎人]
『高橋正武訳『ナダ(何でもないの)』(1956・講談社)』