…西部劇が西部劇を疑いはじめ,西部開拓史の洗い直しがはじまり,伝説が崩れていく。この傾向に対してハワード・ホークス監督は《真昼の決闘》を裏返しにした《リオ・ブラボー》(1959)をつくり,ジョン・フォード監督はインディアンへの憎しみに生きる男の執念を描いた《捜索者》(1956)をへて,〈事実よりも伝説〉こそが美しかった古きよき西部の終焉(しゆうえん)を描いた《リバティ・バランスを射った男》(1962)をつくり,そしてサム・ペキンパー監督は《昼下りの決闘》(1962)で老ガンマンたちの最後の決闘を描く。古きよき西部へのノスタルジーにあふれたペキンパー監督《ワイルドバンチ》(1969)やジョージ・ロイ・ヒル監督《明日に向って撃て!》(1969)がつづくかたわら,イタリアから〈マカロニウェスタン〉(欧米では〈スパゲッティウェスタン〉)と呼ばれる残酷描写を売物にした変種の西部劇が跋扈(ばつこ)するのも,はるかなる西部の伝説が崩壊してしまった60年代である。…
※「リバティ・バランスを射った男」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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