森一生(読み)モリカズオ

デジタル大辞泉 「森一生」の意味・読み・例文・類語

もり‐かずお【森一生】

[1911~1989]映画監督。愛媛の生まれ。戦前戦後を通じて時代劇中心に数々の作品を量産し、人気を集めた。やくざ映画怪談などにも手腕を発揮代表作不知火検校しらぬいけんぎょう」「薄桜はくおう」「ある殺し屋」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「森一生」の意味・わかりやすい解説

森一生
もりかずお
(1911―1989)

映画監督。明治44年1月15日、愛媛県松山市に生まれる。1933年(昭和8)京都帝国大学文学部卒業。同年日活太秦(うずまさ)撮影所に脚本部研究生として入社。1934年、第一映画に移って助監督となる。1936年、新興キネマで監督デビューし、おもに時代劇をつくる。1942年の『大村益二郎(おおむらますじろう)』が佳作として注目された。1942年から1945年まで兵士として中国戦線に従軍。復員して大映京都撮影所に復職。第二次世界大戦後は占領軍の政策で時代劇の製作は制限されたが、現代劇の『わたしの名は情婦』(1949)が好評だった。また、東宝に招かれて黒澤明の脚本で撮った『決闘鍵屋(けっとうかぎや)の辻(つじ)』(1952)が異色のリアリズム時代劇として注目された。以後大映で時代劇の主軸の監督の一人として活躍する。『薄桜記(はくおうき)』(1959)、『続・座頭市物語』(1962)、『ある殺し屋の鍵』(1967)など、見事に大衆映画の型をふまえたヒット作が多い。平成元年6月29日没。

佐藤忠男

資料 監督作品一覧

仇討膝栗毛(1936)
祐天吉松(1937)
岡野金右衛門(1937)
元禄十六年(1937)
宮本武蔵(1938)
忍術関ヶ原 猿飛佐助(1938)
怪猫 赤壁大明神(1938)
錦絵江戸姿 旗本と町奴(1939)
吉野勤王党(1939)
お伊勢詣り(1939)
金比羅船(1939)
鬼あざみ(1939)
近藤勇(1940)
続阿波狸合戦(1940)
親子鳥(1940)
罪なき町(1941)
夫婦太鼓(1941)
大村益次郎(1942)
大阪町人(1942)
三代の盃(1942)
手袋を脱がす男(1946)
槍おどり五十三次(1946)
婦人警察官(1947)
龍虎伝(1947)
生活の樹(1947)
おしどり笠(1948)
山猫令嬢(1948)
狙われた女(1948)
黒雲街道(1948)
紅蓮菩薩(1949)
地下街の弾痕(1949)
わたしの名は情婦(1949)
エノケン・笠置の極楽夫婦(1949)
月の出船(1950)
私は狙われている(1950)
ある婦人科医の告白(1950)
南の薔薇(1950)
ごろつき船(1950)
阿修羅判官(1951)
銭形平次(1951)
花ある怒濤(1951)
逢魔が辻の決闘(1951)
決闘鍵屋の辻(1952)
銭形平次捕物控 地獄の門(1952)
新やじきた道中(1952)
腰抜け巌流島(1952)
銭形平次捕物控 からくり屋敷(1953)
絵本猿飛佐助(1953)
花の講道館(1953)
刺青殺人事件(1953)
銭形平次捕物控 金色の狼(1953)
鯉名の銀平(1954)
酔いどれ二刀流(1954)
知らずの弥太郎(1954)
緑の仲間(1954)
螢の光(1955)
花ざかり男一代(1955)
風雪講道館(1955)
藤十郎の恋(1955)
長崎の夜(1955)
俺は藤吉郎(1955)
まらそん侍(1956)
刑事部屋(1956)
銭形平次捕物控 人肌蜘蛛(1956)
あばれ鳶(1956)
朱雀門(1957)
弥太郎笠(1957)
万五郎天狗(1957)
稲妻街道(1957)
日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里(1957)
赤胴鈴之助 三つ目の鳥人(1958)
七番目の密使(1958)
人肌孔雀(1958)
人肌牡丹(1959)
若き日の信長(1959)
次郎長富士(1959)
薄桜記(1959)
濡れ髪喧嘩旅(1960)
続次郎長富士(1960)
不知火検校(1960)
忠直卿行状記(1960)
風と雲と砦(1961)
おけさ唄えば(1961)
大菩薩峠 完結篇(1961)
怪談 蚊喰鳥(1961)
新源氏物語(1961)
化身(1962)
三代の盃(1962)
新悪名(1962)
江戸へ百七十里(1962)
続座頭市物語(1962)
陽気な殿様(1962)
破れ傘長庵(1963)
悪名市場(1963)
てんやわんや次郎長道中(1963)
悪名波止場(1963)
新忍びの者(1963)
ど根性物語 図太い奴(1964)
昨日消えた男(1964)
駿河遊侠伝 賭場荒し(1964)
悪名太鼓(1964)
博徒ざむらい(1964)
駿河遊侠伝 度胸がらす(1965)
暴れ犬(1965)
忍びの者 伊賀屋敷(1965)
座頭市逆手斬り(1965)
ほんだら剣法(1965)
忍びの者 新・霧隠才蔵(1966)
ほんだら捕物帖(1966)
兵隊やくざ 脱獄(1966)
陸軍中野学校 雲一号指令(1966)
大魔神逆襲(1966)
あの試走車を狙え(1967)
ある殺し屋(1967)
若親分兇状旅(1967)
ある殺し屋の鍵(1967)
悪名十八番(1968)
鉄砲伝来記(1968)
秘録おんな蔵(1968)
出獄四十八時間(1969)
関東おんな極道(1969)
関東おんな悪名(1969)
四谷怪談 お岩の亡霊(1969)
眠狂四郎 円月殺法(1969)
忍びの衆(1970)
あぶく銭(1970)
皆殺しのスキャット(1970)
若き日の講道館(1971)
座頭市御用旅(1972)

『森一生他著『森一生映画旅』(1989・草思社)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「森一生」の解説

森一生 もり-かずお

1911-1989 昭和時代の映画監督。
明治44年1月15日生まれ。昭和11年新興キネマの「仇討膝栗毛」で監督デビュー。同社を吸収した大映の黄金時代をささえ,計129本の作品をのこした。代表作に市川雷蔵主演「薄桜記」,勝新太郎主演「不知火検校(しらぬいけんぎょう)」。平成元年6月29日死去。78歳。愛媛県出身。京都帝大卒。

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世界大百科事典(旧版)内の森一生の言及

【大菩薩峠】より

…第3回は同じく東映の《大菩薩峠》三部作(1957‐59)で,監督は内田吐夢(とむ),机竜之助を前作と同じ片岡千恵蔵,お浜・お豊の二役を長谷川裕見子が演じた。第4回は大映の《大菩薩峠》三部作(1960‐61)で,監督は第1部・第2部が三隅研次,第3部が森一生,机竜之助には市川雷蔵,お浜・お豊には中村玉緒が扮した。第5回は東宝の《大菩薩峠》(1966)で,監督は岡本喜八,机竜之助を仲代達矢,お浜を新珠三千代が演じた。…

※「森一生」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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