化学辞典 第2版 「リン酸水素カリウム」の解説
リン酸水素カリウム
リンサンスイソカリウム
potassium hydrogen phospate
リン酸二水素カリウムとリン酸水素二カリウムがあり,工業的にはこれらを単にリン酸水素カリウムとよぶことが多い.【Ⅰ】リン酸二水素カリウム[(mono)potassium dihydrogenphosphate]:KH2PO4(136.09).略称KDP,MKP.レーザー光学分野でKDPとしてよく知られている.第一リン酸カリウム(primary potassium phosphate)ともいう.水酸化カリウム水溶液にリン酸を1:1のモル比で加え,反応液の pH を4.6に調整し,溶液を濃縮冷却すると得られる.無色の柱状正方晶系結晶.密度2.338 g cm-3.溶解度25 g/100 g 水(20 ℃).エタノールに不溶.水溶液は弱酸性である.加熱すると258 ℃ 以上でメタリン酸カリウムとなる.結晶のC軸方向に強誘電体で圧電率が大きいので,電気材料としての用途がある.キュリー温度123 K 以下で正方晶・常誘電性から斜方晶・強誘電性に転移する.大型単結晶は圧電素子,レーザー高調波発生用の非線形光学素子として重要である.KD2PO4(D-KDP)はポッケルス・セル素子,Q-スイッチング素子として用いられる.pH 緩衝剤,肥料,醸造用添加剤,食品添加剤としても使用される.[CAS 7778-77-0]【Ⅱ】リン酸水素二カリウム:K2HPO4(136.09).略称DKP.第二リン酸カリウム(secondary potassium phosphate)ともいう.リン酸と水酸化カリウムを1:2のモル比に混合し,pH 9.0に調整し,加熱濃縮後,100 ℃ で加熱脱水すると無水和物が得られる.無色の板状または針状の斜方晶系結晶.きわめて強い潮解性を示す.溶解度159 g/100 g 水(20 ℃),エタノールに微溶.水溶液は微アルカリ性を示す.加熱すると282 ℃ 以上で分解し,二リン酸カリウムK4P2O7[CAS 7320-34-5]を生じる.pH 緩衝剤,かん水,膨張剤,金属封鎖剤,醸造用添加剤,細菌の培養基,医薬品,排水処理剤などとして使用される.[CAS 7758-11-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報