スペインのバロック画家。正しくはバルデス・レアール。セビーリャに生まれ、同地で没した。父はポルトガル人の銀細工師、母の姓を名のる。コルドバのアントニオ・デル・カスティーリョの工房で画業を学び、生地に帰って活躍した。ムリーリョの同時代人で、1660年に共同で絵画アカデミーを創設したが、性格も作品も対照的であり、スペイン派に流れる「勇猛な血脈」を代表する1人。初期の超大作『アッシジの城門前でのイスラム軍の敗北』で、すでに美よりも表現性を尊ぶ傾向がみられ、その迅速なタッチ、豊かな色彩感覚、そしてなによりも表現主義的な傾向によってゴヤを先駆する。セビーリャの慈善病院のために描いた『つかの間の命』と『世の栄光の終わり』は死に関する劇的な表現様式としてのバロックの傑作であり、彼の、中庸とか美といった理想とは無縁に、むしろ醜の表現性を追求してやまない性格が余すところなく発揮されている。
[神吉敬三]
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