スペイン南西部、アンダルシア地方セビーリャ県の県都。セビリアともいう。人口68万4633(2001)。グアダルキビル川下流、河口から87キロメートルの地に位置する。スペイン第四の大都市で、イスラム時代の中心都市であり、16世紀には新大陸との交易の根拠地となるなど、アンダルシア地方の歴史・文化の中心をなしている。旧市街はグアダルキビル川の左岸に発達し、対岸の住宅街とはイサベル2世橋とサン・テルモ橋で結ばれる。住宅街の南側に工業地域が広がる。河港を有し、20世紀に水門建設を含む河川改修が行われ、喫水7.6メートルの外航船の出入りが可能となった。港からオリーブ油、シェリー酒、果実、コルク、穀物や鉱石などを輸出し、石油、化学肥料、石炭、木材、機械などを輸入している。古くからオリーブ油やぶどう酒の製造、窯業が行われてきたが、現在は繊維、化学、金属の工業が立地する。キリスト教の祭礼である聖週間やフェリア祭が有名である。入り組んだ路地に白壁の家が並ぶサンタ・クルス街は、1492年に追放されたユダヤ人のゲットーであった所で、近代化が進まなかったためにアラブ風の雰囲気を残している。12世紀の大鐘楼ヒラルダの塔、15世紀の大聖堂、イスラム教徒の宮殿アルカサルなど歴史的建造物も多い。『セビーリャの理髪師』『カルメン』『フィガロの結婚』などの舞台で、また画家ベラスケス、ムリリョの生地である。
[田辺 裕・滝沢由美子]
セビーリャの前身イスパリスHispalisの起源は有史前にさかのぼる。紀元前205年にローマの支配下に入ってのち大きく発展し、西ゴート期最大の学者イシドロ(イシドルス)はその大司教座にあった。イスラム期の前半は首都をコルドバに譲ったが、11世紀中葉以降はアル・アンダルス(イスラム教スペイン)の政治・文化の中心となった。ヒラルダの塔や黄金の塔はこの時代に建てられた。1248年、市はイスラム教徒の手からキリスト教徒の手に移った。大西洋航路が開かれ、インディアス(新世界)との交易が始まると、1503年にこれの統轄機関がセビーリャに置かれた。これによって以後約2世紀間、同市は首都マドリードをしのぐ人口(16世紀後半で12万5000)を擁し、「世界の脈打つ心臓」「この世の不死鳥」といった評判そのままに繁栄の極に達した。この間の貴重な史料を収蔵しているのが同市のインディアス古文書館である。
[小林一宏]
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