日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロシアとヨーロッパ」の意味・わかりやすい解説
ロシアとヨーロッパ
ろしあとよーろっぱ
Россия и Европа/Rossiya i Evropa
ロシアの思想家ダニレーフスキーの主著。1869年雑誌『暁(ザリヤー)』に分載され、のちに単行本として出版された。自然科学の方法に基づいて、世界史上の文明をいくつかの「文化史タイプ」に分類し、歴史の単一発展説を否定して、各タイプは相互に関係なく発展・消滅するとした。ロシアをヨーロッパ文明とは原理的に異なったタイプとみなして、スラブ世界の精神的優越性を強調し、ロシアを頭とする全スラブ連邦の形成を提唱したため、本書は汎(はん)スラブ主義の典型的教義とみなされている。シュペングラー、トインビーらの歴史思想の先駆をなすものとされる。
[長與 進]
『鳥山成人著『ロシアとヨーロッパ』(1949・白日書院)』