スラブ主義(読み)スラブしゅぎ(英語表記)slavyanophil'stvo

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スラブ主義」の意味・わかりやすい解説

スラブ主義
スラブしゅぎ
slavyanophil'stvo

スラボフィルスラブ派 slavyanofilyとも呼ばれる。 1830~70年代にロシアのインテリゲンチアの一部でもてはやされた宗教的国粋主義的思潮。ヘーゲル哲学,特にその宗教的観念論的傾向を継承しつつ,またシェリング哲学に基づいてロシアの国民性の本質を探求し,それをピョートル1世以前の古き「聖なるロシア」に求めた。最初モスクワの文学サークルで形成され,40年代から西欧派 (ザーパドニキ) と激しい論争を展開した。代表者にキレーエフスキー兄弟,A.S.ホミャコフ,アクサーコフ兄弟,Y.F.サマーリンらがいる。彼らは『モスクワ人』誌によって,ロシアには西ヨーロッパ資本主義の害毒を免れうる独特な発展の道があると主張し,真のメシアニズムを伝えるギリシア正教古来の農村共同体慣行の犠牲的精神を保存することを説いた。しかし,ロシアにおける資本主義の発達の必然性およびその進歩的役割に背を向けることになったので,次第に反動性を強め,ついには認識手段としての合理性をも拒否する神秘的傾向を強めるようになった。

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