山川 世界史小辞典 改訂新版 「ロマネスク芸術」の解説
ロマネスク芸術(ロマネスクげいじゅつ)
Romanesque
ヨーロッパにおいて10世紀末から12世紀前葉にかけて開花した芸術で,建築を中心とし,従属する彫刻,絵画も含めていう。多くのロマネスク教会は,農村や山奥につくられ,ゴシック建築を代表とするカテドラルが都市中心部に位置するのとは対照的である。スペイン,イタリア,南フランスなどローマ文化の影響の濃厚な地中海地方に発祥し,徐々に北上していった。ロマネスクとは「ローマ風の」との意味だが,ローマ建築の模倣ではなく,ローマ風半円アーチを建物全体の原理としているところが両者の結びつきを示す。同時代ヨーロッパの精神のあり方を示唆する象徴的・有機的な芸術である。重厚な建物の屋根の重さは,太い列柱と分厚い壁で支えられ,基準寸法(モジュール)を反復しながら,壁面の空間が分出していく。彫刻は建築に従属し,正面入口のタンパン(三角小間)の彫刻のほかに,柱頭装飾をはじめとする建物構成部分の「境界」にあるのが特徴である。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報