境界(読み)キョウガイ

デジタル大辞泉 「境界」の意味・読み・例文・類語

きょう‐がい〔キヤウ‐〕【境界】

各人をとりまく境遇。境涯。
「これまでの不安心な―を一歩離れて」〈鴎外阿部一族
精神・感覚の働きによりもたらされる状態。境地
「恋とか愛とか云う―は既に通り越して」〈漱石草枕
仏語。
㋐善悪の報いによって各人が受ける境遇。
㋑「きょう4」に同じ。
自分の力の及ぶ範囲。
「己が―にあらざる物をば、争ふべからず」〈徒然・一九三〉
[類語]環境境遇身の上境涯境地身空

きょう‐かい〔キヤウ‐〕【境界/×疆界】

土地さかい。「隣国との―」
物事のさかい。「哲学と文学の―」
[類語]境界線区画仕切り境目さかいめきわ分かれ目分界臨界いきボーダーライン地域

けい‐かい【境界/経界】

土地などのさかい。きょうかい。
立札だけの荒れた土の中にむなしく残った一トくるわの―」〈万太郎春泥

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精選版 日本国語大辞典 「境界」の意味・読み・例文・類語

きょう‐がいキャウ‥【境界】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語。
    1. (イ)きょう(境)〔金剛仙論‐三〕
    2. (ロ) 能力の及ぶ限界。その範囲。
      1. [初出の実例]「さかひの中にことことくに諸仏の境界になりて、奈良坂口にはみな梵王帝尺守りしかば」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
      2. 「己が境界にあらざる物をばあらそふべからず、是非すべからず」(出典:徒然草(1331頃)一九三)
      3. [その他の文献]〔無量寿経‐上〕
    3. (ハ) 六塵の世界。衆生煩悩を起こさせる世界。
      1. [初出の実例]「須く境界に向んごとに実に是れ夢の如しと想ふべし」(出典:愚迷発心集(1213頃))
  3. 果報によって各自が出会った境遇、または置かれる環境。境涯。身の上。
    1. [初出の実例]「若し其、道を成じて広く一切を度せば、我が境界に超て増なむとす」(出典:今昔物語集(1120頃か)一)
    2. 「ヤレ嬉しやと言った所が腰弁当の境界(キャウガイ)」(出典浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
  4. 精神、感覚などがはたらく対象となるもの。また、それによってもたらされた状態。境地。到達点。
    1. [初出の実例]「六根をきよめて、仏の境界に入り諸のさはりをはなれて」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
    2. 「適(たまたま)一旦名利の境界(キャウガイ)を離れ」(出典:太平記(14C後)一二)
  5. 自分の勢力の及ぶ範囲にいる者。家の子。配下の者。
    1. [初出の実例]「盛景并子息、縁者、境界、所従、眷属併令却庄内」(出典:高野山文書‐建久四年(1193)二月日・荒川庄盛景没官田支配帳)
    2. 「縁者境界(キャウカイ)、さすが東国にも多かりければ」(出典:源平盛衰記(14C前)二二)
  6. 六根のあるところ。また六根のはたらく場所。転じて体そのものをさす。
    1. [初出の実例]「ロッコン ニ タイスル qiǒgai(キャウガイ) ツヨキ トキンバ、スナワチ ロッコン ヲ ソンザス モノ ナリ ト」(出典:信心録(ヒイデスの導師)(1592)二)

きょう‐かいキャウ‥【境界・疆界】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 土地や国のさかい。また、二つのものの境目
    1. [初出の実例]「由是踰峯跨谷、浪為境界」(出典:続日本紀‐慶雲三年(706)三月丁巳)
    2. 「二以上の選挙区にわたって、市町村の境界の変更があったときは」(出典:公職選挙法(1950)一三条)
    3. [その他の文献]〔列子‐周穆王〕
  3. 区域。地域。領域
    1. [初出の実例]「目前境界似吾癯、地老天荒百草枯」(出典:狂雲集(15C後)陋居)
    2. [その他の文献]〔耶律楚材‐外道李浩和景賢予再和詩〕
  4. 数学で、位相空間部分集合Aの境界点の集合のAに対する称。
  5. きょうがい(境界)

けい‐かい【境界】

  1. 〘 名詞 〙けいかい(経界)
    1. [初出の実例]「下手いつもの竹上下へ小壁をとりし荒き格子の境界(ケイカイ)」(出典:歌舞伎・四千両小判梅葉(1885)二幕)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「境界」の意味・わかりやすい解説

境界
きょうかい
boundary

S を位相空間,M をその部分集合とする。いま M の内点全体を MiM の外点全体を MeM補集合Mc とおけば,McMeMMc=φ,MiMe=φ である。 M の境界および境界点とは,補集合 Mf=(MiMe)c およびこの補集合の点のことである。したがって位相空間 S は,MiMeMf和集合に等しい。

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普及版 字通 「境界」の読み・字形・画数・意味

【境界】きようかい

さかい。

字通「境」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の境界の言及

【境】より

…堺とも書く。あらゆる事物や空間を区切るさまざまな仕切り(境界)。歴史上,境は原始社会から現代に至るまで,小は家と家の境,耕地と耕地の境などから,大は国郡などの行政区分上の境や国境まで普遍的に存在する。…

【精神遅滞】より

…また,難聴によって言語の習得と知覚発達に遅れがあるものは,本来の知能は保たれているので,仮性の精神遅滞という。
[分類]
 WHOは知能指数(IQ)によって,精神遅滞を最重度,重度,中等度,軽度,境界に分けているが,伝統的には白痴,痴愚,魯鈍(軽愚)および境界に分けられる。一般に情意の障害は知的な障害ほどは目立たず,むしろ人なつこく,愛きょうがあり,すなおなことがある。…

※「境界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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