モジュール(読み)もじゅーる(英語表記)module

翻訳|module

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モジュール」の意味・わかりやすい解説

モジュール
もじゅーる
module

大きな機構・組織を構成するための基本となる独立した構成要素のこと。モジュール左官、石工などの型取り工具とか、型に入れてつくった鋳物をいうモールドmoldと同じ語源のことばであるが、モールドよりも多方面で広い意味をもった語として使われている。

〔1〕土木関係では、流量測定の単位をいう。建築関係では、柱などの建築設計上の基本寸法をさす場合と、構成材の大きさを決める寸法の組織をいう。家具などの工作物では、設計と製造を規格化するために、基本構成単位に用いる大きさの単位をいう。

〔2〕電気装置や原子力発電システムでは、装置やシステムを構成する区別可能な機能性をもつデバイスで、ユニットとして取り替え使用できるものをいう。このため、モジュールはユニットとしての性能や特性が個別で検査・評価できるものである。

〔3〕電子機器では、受動素子能動素子光電素子を組み合わせて一つのパッケージに入れたり、カード状に組み立てたり、プラスチックで成形したりして、一定の機能をもたせたものをいう。これらは規格化された使用ができるように、一定の外形寸法と定まったプラグイン(差込み)端子や、はんだ付け端子(バンプ)をもっている。マイクロモジュールやプラグインカードは代表的な例である。

〔4〕コンピュータでは、構成機器を記憶装置などの機能別、または記憶容量などの大きさ別に分割した装置をいう。これらモジュールは各独立した動作を行い、システムの要求に応じた任意の組合せが構成できる。

〔5〕コンピュータ・プログラムでは、構成するために基本となる基本ブロックをいう。このモジュールはサブルーチンまたは抽象データ型が基本となり、コンパイルや連係編集を容易にする。

〔6〕航空機、宇宙船の場合では、全構造に対してそれ自体が独自の機能を果たせるようにブロック状に設計されたユニットをいう。たとえば、指令モジュールとか、月面着陸モジュールなどが例である。

〔7〕機械では、歯車の大きさを決めるピッチ円直径をミリメートルで表し、これを歯数で割ったものをいう。モジュールの値が大きくなると歯車の歯は大きくなるが、JIS(ジス)(日本工業規格)では0.2~25までの範囲で46のモジュールが規定されている。

〔8〕時計では、外装品を取り除いた機構本体部で、一部は動作するが未完のものをいう。

〔9〕数学では、ベクトル空間、線形空間を作業域とする加群(加法を演算とするアーベル群)をいう。

[岩田倫典]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モジュール」の意味・わかりやすい解説

モジュール
module

歯車の歯の大きさを決める値で,単位はミリメートルであるが,通常は省略する。この値が等しい歯車同士は歯車の基準ピッチ内の直径に関係なく噛み合う。基準ピッチ円 (→標準歯車 ) の直径を d mm,歯数を z 枚とすると,基準ピッチ t は,t=πd/z mmで示される無理数となるので,モジュール m は,基準ピッチを円周率で割った値 ( md/zt/πmm ) と定める。インチ制の場合には,歯数をインチ単位の基準ピッチ円直径で割った値 ( pz/d ) と定め,この p をダイヤメトラルピッチという。したがって,この p とモジュールとの間には m=25.4/p の関係がある。

モジュール

加群」のページをご覧ください。

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