イオン交換膜法(読み)イオンコウカンマクホウ

化学辞典 第2版 「イオン交換膜法」の解説

イオン交換膜法(カセイソーダ製造)
イオンコウカンマクホウ
ion-exchange membrane process

イオン交換膜を隔膜として食塩溶液の電解により,カセイソーダ塩素を製造する方法.日本では水銀法を全面的に廃止して隔膜法に転換することとなったが,従来のようにアスベスト(石綿)を隔膜に用いる方法では製品のカセイソーダに不純物の食塩が多すぎて,用途によっては使用できない.これに対し,イオン交換膜を隔膜に用いる方法では,水銀法と同程度の純度濃度のカセイソーダを得ることができる.したがって,現在日本ではすべてこの方法に置き換わっている.隔膜はカセイソーダに耐える必要があるので,フッ素樹脂を基体とした陽イオン交換膜を用いる.水銀法と同様に,陽極室に食塩溶液を通して陰極室からカセイソーダを取り出し,未反応食塩溶液は固体食塩を加えて飽和状態とし,十分精製した後,陽極室に戻す.膜は耐久性があるとともに固定イオン濃度が大きいことが必要である.これにより製品の純度および濃度を高くすることができる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イオン交換膜法」の意味・わかりやすい解説

イオン交換膜法
イオンこうかんまくほう

「イオン交換膜法製塩」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のイオン交換膜法の言及

【塩】より

…このほか,量は少ないが,天日塩を溶解した鹹水を原料に夾雑物を除き,これを煮つめて純度の高い塩結晶(精製塩)を得ている。 イオン交換膜法とは,日本で開発,実用化された優れた鹹水採取技術で,塩化ナトリウム3%程度の海水から同じく20%程度の鹹水を採取する方法である。その原理は,図2に示すように,ナトリウムイオン,カリウムイオン,マグネシウムイオンのような陽イオンのみを通す膜(陽イオン交換膜)と塩素イオン,硫酸イオンのような陰イオンのみを通す膜(陰イオン交換膜)を交互に並べた槽に海水を入れ,両側から直流電気を通すと,電気によりイオンが膜を通って運ばれて一つおきに濃い海水と薄い海水とができる(これを電気透析という)。…

【食塩電解】より

…食塩水を電気分解して水酸化ナトリウムNaOHと塩素Cl2を製造する工業的方法。隔膜法,水銀法,イオン交換膜法の三つの方法がある。
[隔膜法]
 アスベスト隔膜を用いて仕切った2室からなる電解槽の1室にDSE陽極(チタンTi板の表面に酸化ルテニウム(IV)RuO2などの電極触媒を付けた電極。…

【水酸化ナトリウム】より

…NaCl水溶液では次のイオン4種が存在し NaCl⇄Na+Cl H2O⇄H+OHこれを電解すると陰極でアルカリが生成するが,そのままでは陽極に生じたCl2と混合して Cl2+OH⇄ClO+Cl+H2Oが右に進むので,生成物が消費される。そのため生成物相互を分離するくふうがなされ,その方法には隔膜法,水銀法,イオン交換膜法の3種がある。発電機の発達した19世紀後半から直流電流を用いての工業的規模の電解が可能になった。…

【ソーダ工業】より

… 一方,1973年の熊本水俣病判決を契機に水銀公害に対する社会的関心が高まるなかで,同年政府は〈水銀等汚染対策推進会議〉を設置し,水銀法から隔膜法への製法転換を決定した。当初の決定では78年3月末までに隔膜法へ製法転換を完了すべきこととされていたが,隔膜法による苛性ソーダは水銀法苛性ソーダに比べて品質面で劣ることが問題とされたため,水銀法と同品質の苛性ソーダを製造できるイオン交換膜法が工業的に実用化可能と判断されるまで,隔膜法への全面転換完了期限は延期された。そして79年に通産省はイオン交換膜法は工業的に実用可能と判断し,84年末までにイオン交換膜法へ転換を完了すべきことを決定した。…

※「イオン交換膜法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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