隔膜法(読み)かくまくほう(その他表記)diaphragm process

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「隔膜法」の意味・わかりやすい解説

隔膜法
かくまくほう
diaphragm process

食塩水の電気分解により塩素と水酸化ナトリウム (カセイソーダ) を製造する方法の一つ。このほかに水銀法とイオン交換膜法 (→イオン交換膜法製塩 ) があり,水銀法は純度の高い水酸化ナトリウムが得られることから優勢であったが,水銀公害の問題から日本では中止され,隔膜法に一時切替えられた。鉄網を陰極,不溶性金属極または黒鉛を陽極とし,両極室は石綿などの隔膜で分離される。食塩水を電解すると陰極室に水酸化ナトリウムと水素が,陽極室には塩素が生じる。隔膜の役割は重要で,電流効率と生成物の純度に直接影響があり,両極生成物の分離と両極室溶液の混合を防ぐ役目をするので,種々の工夫がなされている。陰極室から取出される流出液の組成は水酸化ナトリウム 10~12%,塩化ナトリウム 11~14%。これを真空釜で濃縮すると溶解度の差により塩化ナトリウムは析出し,水酸化ナトリウムは濃縮される。隔膜法水酸化ナトリウム中には塩化ナトリウムを含み純度が低いため,イオン交換膜法の技術が確立されたことに伴い,急速に縮小されている。

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化学辞典 第2版 「隔膜法」の解説

隔膜法
カクマクホウ
diaphragm process

[同義異語]電解ソーダ法

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「隔膜法」の意味・わかりやすい解説

隔膜法
かくまくほう

電解ソーダ法

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世界大百科事典(旧版)内の隔膜法の言及

【ウラン濃縮】より

… 235Uと238Uとは,核的特性がまったく異なり,1原子当りの重さもわずかに異なるが,ともにウラン元素としての共通した化学的特性を有するため,通常の分析化学的な操作では,実際上,両者を濃縮・分離することはできない。上記5ヵ国が最初に採用したウラン濃縮の方法は,いずれもガス拡散法または隔膜法と呼ばれるものであった。この方法は,ウランを気体状の化合物である六フッ化ウランUF6にし,この気体を隔膜と呼ばれるきわめて微細な貫通孔を有する多孔性物質中を通して低圧側に噴き出させると,隔膜を透過してきたUF6中の235Uの比率が,透過せずに高圧側に残っているUF6中の比率にくらべてわずかに高いことを利用するものである。…

【食塩電解】より

…食塩水を電気分解して水酸化ナトリウムNaOHと塩素Cl2を製造する工業的方法。隔膜法,水銀法,イオン交換膜法の三つの方法がある。
[隔膜法]
 アスベスト隔膜を用いて仕切った2室からなる電解槽の1室にDSE陽極(チタンTi板の表面に酸化ルテニウム(IV)RuO2などの電極触媒を付けた電極。…

【水酸化ナトリウム】より

…NaCl水溶液では次のイオン4種が存在し NaCl⇄Na+Cl H2O⇄H+OHこれを電解すると陰極でアルカリが生成するが,そのままでは陽極に生じたCl2と混合して Cl2+OH⇄ClO+Cl+H2Oが右に進むので,生成物が消費される。そのため生成物相互を分離するくふうがなされ,その方法には隔膜法,水銀法,イオン交換膜法の3種がある。発電機の発達した19世紀後半から直流電流を用いての工業的規模の電解が可能になった。…

【ソーダ工業】より

…また1861年には品質面,コスト面で優れるアンモニアソーダ法(ソルベー法)がベルギーのE.ソルベーによって発明され,さらに90年にはドイツで塩水の電気分解(食塩電解)により,苛性ソーダ,塩素および水素を製造する電解法が工業化された。電解法は隔膜法と水銀法の2種に大別できるが,水銀法はより高純度の苛性ソーダを得られるため,第2次大戦後支配的になった。 日本のソーダ工業は欧米より90年遅れて1881年,パルプ製造に使用するソーダを国産化すべく大蔵省印刷局でルブラン法により東京丸ノ内で工業化されたのを始まりとする。…

※「隔膜法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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