イソシアニド錯体(読み)イソシアニドサクタイ

化学辞典 第2版 「イソシアニド錯体」の解説

イソシアニド錯体
イソシアニドサクタイ
isocyanide complex

イソシアン化物錯体,イソニトリル錯体(isonitrile complex)ともいう.配位子としてイソシアニド(RNC,またはイソニトリル)をもつ錯体の総称.イソシアニドはCOと等電子的な共鳴混成体をなしている.

炭素孤立電子対は電子供与体として作用し,CNの反結合性軌道は電子受容体として作用するので,COと同様に低原子価金属錯体をつくることのできる配位子である.イソシアニド配位錯体は数多く合成されており,シアノ錯体の直接アルキル化による方法,

あるいは,イソシアニド錯体を適当なハロゲン化アルキルで処理することにより,アルキル基を相互に交換して合成する.

[Fe(CNCH3)6]Br2 + C6H5CH2Br →

[Fe(CN)2(CNCH2C6H5)4] + [Fe(CN)(CNCH2C6H5)5]Br

また,カルボニル錯体の配位子交換で得ることもできる.

[Cr(CO)6] + 6CNC6H5 → [Cr(CNC6H5)6] + 6CO

[Ni(CO)4] + 4CNC6H5 → [Ni(CNC6H5)4] + 4CO

なお,[Cr(CNC6H5)6]はヘキサキス(イソシアン化フェニル)クロム(0)(hexakis(isocyanobenzene)chronium)という.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android