イソニトリル(英語表記)isonitrile

改訂新版 世界大百科事典 「イソニトリル」の意味・わかりやすい解説

イソニトリル
isonitrile

カルビラミンcarbylamine,またはイソシアン化物isocyanideともいう。イソシアン基-N=Cが炭化水素基Rに結合した化合物の総称で,一般式はR-NCで示される。ニトリルR-CN異性体isomerであることからこの名がある。炭化水素基のイソシアン化物として命名される(CH3-NCはイソシアン化メチル,C6H5-NCはイソシアン化フェニル)。一般に不快臭をもつ有毒な無色液体で,毒性はニトリルよりも強い。また,沸点は相当するニトリルよりも低い。弱アルカリ性を示しアルカリに対しては安定であるが,希酸によって容易に分解されて第一アミンR-NH2とギ(蟻)酸HCOOHを生じる。また,還元によってメチル基をもつ第二アミンR-NH-CH3を生じる。加熱により異性化してニトリルを生じ,室温でも徐々に変化して三量体(R-NC)3と思われる化合物を与える。一般に第一アミンにクロロホルムとアルコールカリを作用させて合成される(カルビラミン反応)。この反応で生成するイソニトリルはごく少量でも特異な悪臭が認められるので,第一アミンおよびクロロホルムの検出反応に用いられる。

 R-NH2+CHCl3+3KOH─→R-NC+3KCl+3H2O

鎖式イソニトリルは,ハロゲン化アルキルシアン化銀との反応によって得られる付加物シアン化カリウムで分解すれば得られる。




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化学辞典 第2版 「イソニトリル」の解説

イソニトリル
イソニトリル
isonitrile

isocyanide.カルビルアミンともいう.イソシアノ基-NCが炭化水素基Rに結合した化合物で,一般式RNCで表され,ニトリルRCNの異性体である.イソシアニドとして命名される.ハロゲン化アルキルにシアン化銀を作用させた付加物をシアン化カリウムで分解すると得られる.

RNC + K[Ag(CN)2] 

また,第一級アミンにクロロホルムとアルコール性カリを加えて加熱すると得られる.この反応はカルビルアミン反応といい,第一級アミンやクロロホルムの検出に用いられる.

RNH2 + CHCl3 + 3KOH → RNC + 3KCl + 3H2O

構造は

R-N≡C:(またはR-NC)
として示される.一般に,不快臭の無色の液体.沸点は相当するニトリルより低い.有毒.弱アルカリ性で,アルカリに対しては安定であるが,酸によって加水分解してギ酸と第一級アミンとを生じる.還元によりメチル基をもつ第二級アミンになる.加熱によって異性化してニトリルになる.室温で徐々に重合する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イソニトリル」の意味・わかりやすい解説

イソニトリル
いそにとりる
isonitrile

イソシアノ基-NCをもつ化合物RNCのことをいう。正しくはイソシアノ化物(イソシアン化物)というが、古くはカルビルアミンcarbylamineといわれていた。ニトリルRCNの異性体である。代表的合成法として、ヨウ化アルキルとシアン化銀の反応、あるいは、第一級アミンとクロロホルム、塩基を加熱するカルビルアミン反応がある。一般的に不快なにおいをもち有毒である。酸によりアミンに加水分解される。有機合成反応の原料として使われる。

[谷利陸平]

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百科事典マイペディア 「イソニトリル」の意味・わかりやすい解説

イソニトリル

イソシアン基−N=Cが炭化水素基Rに結合した有機化合物の総称。カルビラミン,イソシアン化物とも。多くは悪臭のある液体で,ニトリルR−C≡Nの異性体。第一アミンをクロロホルムおよびアルコールカリウムと加熱すると生ずる(カルビラミン反応)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イソニトリル」の意味・わかりやすい解説

イソニトリル

「カルビルアミン」のページをご覧ください。

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