オオシモフリエダシャク(英語表記)Biston betularia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオシモフリエダシャク」の意味・わかりやすい解説

オオシモフリエダシャク
Biston betularia

鱗翅目シャクガ科。エダシャク類の1種で,ヨーロッパでよく知られているガ。前翅開張幅 38~50mmの中型種。翅表は白色地に黒色の小点を霜降り状に散らし,黒色の横紋列がある。裏面も同じような紋をもつ。幼虫シラカンバハコヤナギシナノキなどを食べる。成虫は夏期山地 (北海道では平地) にみられ,シラカンバなどに止っていると背地と樹皮との見分けがつきにくい。本種のヨーロッパ亜種では,イギリスの産業革命時,工場からの排煙で周囲がすすでよごれると,環境に合せるように暗化型のふえたことが知られている。白っぽい通常型が鳥に食われたことによるバランスの変化によるが,こうしてこの種は適応性の強い種であることが証明された。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のオオシモフリエダシャクの言及

【工業暗化】より

…1930年以後になってフォードE.B.FordやケトルウェルH.B.P.Kettlewellにより,工業化以前は黒化型遺伝子は突然変異としてひじょうに低い頻度でしか存在しなかったが,工業化で地衣に覆われた樹木の幹などが汚れるとそこに止まった黒化型は鳥に捕食されにくくなり,したがって自然淘汰に有利となり急激に増加したことを明らかにした。 よく知られた例としてオオシモフリエダシャクがあり,マンチェスターでは1848年には黒化型はきわめてまれであったが50年後の98年には集団の95%を占めるに至った。工業暗化はドイツのルール地方でも古くから起こっており,今日ヨーロッパ,カナダ,アメリカの工業地帯で100以上の例が知られている。…

※「オオシモフリエダシャク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」