クムトゥラ石窟(読み)クムトゥラせっくつ

改訂新版 世界大百科事典 「クムトゥラ石窟」の意味・わかりやすい解説

クムトゥラ石窟 (クムトゥラせっくつ)

中国,新疆ウイグル自治区庫車(クチヤ)県の西南西約30km,ムザルト川左岸の谷口の確爾達格山麓に開掘された仏教石窟群。中国では庫木土拉(クムトゥラKumtra)と記す。窟数76,うち30窟が保存良好である。南から北へ三つの山峡があり,前2者の山峡には,ドーム天井の方形主堂に後堂をもつ窟や,長い入口通廊にドーム天井をもつ方形主室が続く窟があり,壁画キジル石窟の後期様式と並行するが,一部に改修がある。1903年に第1回大谷探検隊,06年にグリュンウェーデル,07年にペリオ,28年に黄文弼が調査した。石窟群の主要部は第3峡に群集し,唐の年紀(843年から894年までにわたる)をもつ題記が多数あることから,グリュンウェーデルは〈碑文石窟Inschriften Schlucht〉と名づけた。壁画はキジル後期から唐風に移行する作風と中国画の作風をもつものがあるが,後者が主流をなし,阿弥陀浄土変相,十二大願,九横死・序品,十六観・日想観などのテーマがあり,敦煌や東アジアと共通する作例が多いことは注目に値する。また塑像トゥムシュクやショルチョクとは別の様式をもつ。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のクムトゥラ石窟の言及

【仏像】より

…北道のトゥムシュク遺跡の塑像は額が広く目鼻口が中央に寄った顔貌に特色があり,洗練された造形感覚を示す。北道のほぼ中央部のクチャ地区のクムトゥラ石窟の塑像には美しい彩色が遺り,インドやイランの作風のみならず中国の唐様式も看取しうる。東に進んでショルチュク,さらにカラホージョの塑像も時代が下るとともに唐様式が濃厚になる。…

※「クムトゥラ石窟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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