塑像(読み)ソゾウ

デジタル大辞泉 「塑像」の意味・読み・例文・類語

そ‐ぞう〔‐ザウ〕【塑像】

粘土など、可塑かそのある材料を用いて造った像。簡単な心木しんぎにわらを巻き、上に厚く土をつける方法と、粗く彫刻した心木に薄く土をつける方法とがあり、奈良時代に盛行した。現代では多く、ブロンズ像などの原型として造られる。
[類語]肖像ポートレート画像影像彫像自画像画面実像虚像残像

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精選版 日本国語大辞典 「塑像」の意味・読み・例文・類語

そ‐ぞう‥ザウ【塑像】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 粘土で制作した像。はじめ心木(しんぎ)にわらや縄を巻きつけ、わらを混ぜた粗い土をつけ、さらに表面を細かい土で仕上げ彩色する。ある程度彫刻した木心に薄く肉付けしたものもある。唐代、また、日本の奈良時代には、この仏像が流行した。
    1. [初出の実例]「尊恵講堂塵漠漠。行基塑像坐堆堆」(出典:翰林葫蘆集(1518頃)六・答文)
  3. 粘土、蝋(ろう)などの可塑性の材料で肉付けし、乾燥させた像。また、さらに鋳造してブロンズなど硬い材料に移しかえた像。石膏像にもいう。
    1. [初出の実例]「かの白堊の塑像(ソザウ)を抱きて霜夜に凍えたり」(出典:落梅集(1901)〈島崎藤村七曜のすさび・火曜日新茶)
    2. [その他の文献]〔五代史‐慕容彦超伝〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塑像」の意味・わかりやすい解説

塑像
そぞう

塑は粘土を意味し、土でつくった彫像の総称。広義には石膏(せっこう)像も塑像の一つだが、通常は東洋に古くから伝わり、(てん)、攝(せつ)、(しょう)、塑、素、泥などとよばれた像をさす。その源流は西域(せいいき)にあるといわれ、仏教美術の東流で中央アジアから中国、日本へと伝えられた。

 中国では古くは敦煌(とんこう)、麦積山(ばくせきざん)の石窟(せっくつ)寺院などに多くの遺品があるが、すでに六朝(りくちょう)時代(3~6世紀)にも北魏(ほくぎ)の都のあった大同や竜門の石像と並んで多くの塑像がつくられ、唐代(7~10世紀)に隆盛を極めた。

 日本へは7世紀ごろの伝来と考えられ、飛鳥(あすか)(奈良県)の川原(かわら)寺の裏山から、かつて同寺に安置されていた塑造の仏像の断片多数が近年発見され、なかには丈六(じょうろく)像の腕と思われるものもあって塑像の盛行を示しているが、現存のものとしては奈良・當麻(たいま)寺の弥勒(みろく)仏坐像(ざぞう)(国宝、7世紀)が最古の例である。制作の技法は像の大きさや形によっても異なるが、芯木(しんぎ)に藁(わら)や縄を巻き、粘土を何層かに分けて少しずつつけては乾燥させる。土は表面に近いほど細かいものを用い、粘着力を増すために膠(にかわ)や苆(すさ)(藁や麻を細かく刻んだつなぎ材)を混ぜる。また、ある程度彫刻した木心に薄く塑土をつけたものや、躯幹(くかん)部を複雑な木枠でつくり、これを木舞(こまい)(木や竹を細く裂いて編んだもので、土壁の芯材に用いる)で囲って、その上に粘土を盛る方法もあり、これは木舞の内側に空間ができるので像の重量を軽くできる利点がある。

 奈良時代は、当時流行の写実的表現に適したことから塑像の全盛期となり、法隆寺五重塔の塔本四面具、東大寺法華堂の日光・月光(がっこう)像と執金剛神(しっこんごうしん)像、同寺戒壇院の四天王像、新薬師寺の十二神将像(以上国宝)などの名作を残しているが、土を乾燥させただけなので、気候風土の点から中央アジアや中国には適しても、多湿なわが国には不向きで、その脆弱(ぜいじゃく)さ、過大な重量という欠点のために、平安時代に入るとしだいに衰えた。わずかに鎌倉時代になって肖像彫刻のような写実性を重視する像に用いられた例もあるが、これも中国宋(そう)代の彫刻の影響と考えられる。

[佐藤昭夫]

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百科事典マイペディア 「塑像」の意味・わかりやすい解説

塑像【そぞう】

粘土でつくった像。クチャ,トルファン等西域の遺跡からすぐれた像が多数発見され,仏教美術の東漸とともに中国,日本にも伝わった。日本では奈良時代に盛んに行われ,摂(しょう)などと呼ばれた。骨組となる心木にわらを巻きつけ,その上に粘着力を強めるため膠(にかわ)や寸莎(すさ)を混ぜた土をつけ,彩色したもの。法隆寺五重塔初層の塑像群,東大寺三月堂の日光・月光(がっこう)像,同戒壇院の四天王像,新薬師寺の十二神将像など。ブロンズ像製作の原型となる石膏像も塑像といわれる。
→関連項目白鳳文化

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塑像」の意味・わかりやすい解説

塑像
そぞう

粘土でつくった像。古くはてん,摂(しょう),泥像,塑と称した。インド,中央アジア,中国で盛行し,日本へは唐より伝来し,奈良時代に盛んにつくられた。技法は木芯(心)に縄などを巻いてその上に塑土を肉づけする方法と,簡単に彫成した木像に薄く肉づけする方法があり,最後に精土で仕上げをし,表面に金箔や彩色を施したものも多い。このほか唐代に盛行した塑壁もある。日本の仏像の遺品としては法隆寺五重塔下四面の群像,東大寺法華堂(三月堂)『日光・月光菩薩立像』『執金剛神像』,同寺戒壇院『四天王像』などが著名。奈良時代以降は一部肖像彫刻以外はまれである。

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旺文社日本史事典 三訂版 「塑像」の解説

塑像
そぞう

粘土でつくった彫像
木の芯 (しん) に藁 (わら) をまき,その上に粘土をつける。仕上げには雲母を混ぜ彩色を施したものもある。天平時代に盛行したが,材質感が重く冷たいため発達しなかった。法隆寺五重塔内塑像群,東大寺法華堂の『日光・月光菩薩像』は有名。

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普及版 字通 「塑像」の読み・字形・画数・意味

【塑像】そぞう

泥塑。

字通「塑」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の塑像の言及

【塑造】より

…〈塑〉は粘土を意味し,塑造(クレー・モデリングclay modelling)は粘土で造形する技法をいう。これによってつくられる彫刻が塑像である。彫刻の技法は大別して,木彫や石彫など材料から形を彫り出すカービングcarvingと,粘土などの素材をくっつけて自由な形をつくりだすモデリングmodellingに分かれる。…

※「塑像」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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