クルスク戦車戦(読み)クルスクせんしゃせん

改訂新版 世界大百科事典 「クルスク戦車戦」の意味・わかりやすい解説

クルスク戦車戦 (クルスクせんしゃせん)

1943年7月,独ソ戦線の中央部クルスクKursk周辺で行われた史上最大の戦車戦。両軍合計,戦車1万3200両,飛行機1万1950機,火砲6万9100門,人員415万人という規模である。アメリカ・イギリス側は比較的軽く扱うが,ソ連側は第2次世界大戦の運命は,この戦いで決まったとしている。全般の戦況上できたクルスク付近のソ連軍突出部に対し,ドイツ軍はその基部を南北からしぼり上げて,所在のソ連軍を包囲撃滅しようとした。このためドイツ軍は機甲14個師団,自動車化2個師団を集結。あらかじめ諜報によりその企図を知ったソ連軍はそれを上回る戦力を集中した。ドイツ軍のティーゲルTiger,パンテルPanther,ソ連軍のT34,KV1など第2次大戦の代表的戦車が対戦した。ソ連軍は幾重にも防御陣地を築き,前線から後方地帯まで数十kmにおよぶ深さの防御陣地を作り,その突破のためドイツ軍が戦力を使い果たした時期をみて予備兵団が攻勢にでるという戦法をとった。この戦闘においてドイツは回復不能なまでの損害をうけ,東部戦線では二度と攻勢に転ずることはなかった。
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世界大百科事典(旧版)内のクルスク戦車戦の言及

【戦車】より

…このように戦車の火力と装甲を強化する激しい競争が展開され,大量の戦車や自走砲を投入した激烈な戦車戦が各地の戦場で戦われた。なかでも東部戦線で戦われた大規模な戦車戦であるクルスク戦車戦が有名である。この戦闘でソ連軍は大規模な地雷原および対戦車壕など各種対戦車障害と,ドイツ軍を上まわる戦車,自走砲,対戦車火器を組み合わせた深さ約80kmにわたる対戦車防御組織をつくり,ドイツ軍戦車部隊の進撃を阻止した。…

※「クルスク戦車戦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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