…西ヨーロッパ中世後半におこなわれた美術。ロマネスク美術につぎ,その発展の結果として生まれ,12世紀中期から準備期に入り,13世紀にフランス,イギリスにおいて明確な様式として成立し,さらに西ヨーロッパ全土に波及し,つづく2世紀間に発展・変化して,15世紀初めからイタリアで形成されるルネサンス美術が代表する近世美術にとって代わられるまで存続した。ゴシックGothicの名称は,バザーリらルネサンスのイタリア人が中世建築を粗野な蛮族ゴート人Gothのもたらしたものとして非難したことに由来するが,19世紀以来,西ヨーロッパ中世美術の一様式をさす美術史上の用語として適用されるにいたった。…
…インド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派のうち東ゲルマン語に属し,現在は死語となっている。ゴート語の話し手であるゴート人は,1世紀の初めころまでに,南スウェーデンからバルト海をはさむ対岸のビスワ河口地帯に移住し,さらに東ゴート,西ゴートに分かれて南下し,2世紀の中ごろには黒海沿岸に到達したが,ゴート人のこのような早い時期におけるギリシア文化圏との接触により,4世紀の中ごろには西ゴートの司教ウルフィラによって聖書がギリシア語からゴート語に翻訳された。…
…5世紀から8世紀にかけて,西ゴート族がフランス南部からイベリア半島にかけて建設したゲルマン部族国家。ドイツ語でReich der Westgotenという。…
…5世紀から6世紀に東ゴート族がイタリアを中心に建設したゲルマン部族国家。ドイツ語ではReich der Ostgotenと称する。…
…通常〈民族大移動〉という場合,それは黒海北岸にいたゲルマン系のゴート族が,4世紀後半,西進して来たフン族に押され,376年,西ゴート族がドナウ川を渡って初めてローマ帝国領に移住したのをきっかけに,ライン川,ドナウ川などローマ帝国の国境線の北東方一帯にいたゲルマン人の諸部族が,相次いで移動を開始し,とくに東ゲルマンに属する諸部族が西ローマ領内深く移住・定着して,各地にそれぞれの部族国家を建設したほぼ6世紀末に至る二百数十年間の過程のことである。 しかし世界史的にみると,あたかもこの時代は,東西両洋にわたり,巨大な世界帝国の統一が動揺・破綻し,辺境にいた素朴な異民族が,古代的な高度文明社会の内部に侵入し,あるいはその影響を受けて周辺で新しい国家をつくるなど,文化史的にも政治史的にもきわめて類似した注目すべき現象のみられる時代に当たる。…
※「ゴート族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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