サティロス劇(読み)さてぃろすげき

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

サティロス劇
さてぃろすげき

サティロスSatyrosの姿をした合唱隊が活躍するギリシア演劇の一形態。古代ギリシアの国家的行事たる悲劇競演において、1日の上演は悲劇3編に続くサティロス劇1編の四部構成であり、4編すべてを同じ1人の詩人が提供した。サティロス劇は酒神などの神話圏を素材とし、粗放活発で野卑猥雑(わいざつ)な笑いに満ちて、悲劇との対照が著しいが、筋の展開方式は悲劇と同工であり、これを喜劇と混同してはならない。さかのぼれば前身をなす芸能はペロポネソスで紀元前650年ごろには存立し、前600年ごろコリントスで活動した詩人アリオンもこれに関与、前520年ごろアテナイに入り、ここで登場人物の多様化による主題の拡大とともに悲劇との連携を深めて、ついに国家的競演行事にも組み込まれたと推察される。作者では、アイスキロスにやや先んじて競いもしたプラティナスが名高いが作品は残っていない。現存の完全作品としてはただ1編、エウリピデスの『キクロプス』が伝えられている。[細井雄介]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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