日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニッケルめっき」の意味・わかりやすい解説
ニッケルめっき
にっけるめっき
nickel plating
ほかの金属材料の表面にニッケルの薄膜を被覆すること。鉄鋼、亜鉛合金、銅合金などの製品の防食を目的として行われることが多いが、そのほかに電鋳などにも用いられている。鉄鋼上にニッケルめっきをする場合は、まず銅めっきを下地めっきとしてかけ、次にニッケルめっきを厚くつけ、最後にその上に装飾的な目的でクロムめっきを薄くかけることが多い。このような構造のめっきは、ニッケルクロムめっきとよばれている。電気めっき浴として代表的なものはワット浴である。この浴は硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸からなり、高速度めっき浴としてよく知られている。ワット浴に光沢剤を加えると光沢ニッケルめっきが得られる。光沢ニッケルめっきは光沢剤に由来する硫黄(いおう)を含んでいるので、無光沢めっきに比べると耐食性は劣る。しかし、無光沢めっきの上に光沢めっきをかけて二層ニッケルめっきとしたときには、光沢めっき層が犠牲陽極となって無光沢めっき層を陰極防食するため、めっき層全体としては高い耐食性が得られる。電着応力(電着の進行に伴って、めっき層内に発生する内部応力)の低い厚付けめっきが必要なときにはスルファミン酸浴が用いられている。
[杉本克久]